よくある質問

Q1.
医薬分業について
医薬分業ってどんな制度ですか?
A.

 医薬分業とは、患者が医師・歯科医師の診察を受けた後、医療機関から薬の代わりに処方せんをもらい、その処方せんをもって街の保険薬局で薬を調剤してもらう制度です。薬の効果や安全性を一層高め、医療の質の向上を図ろうとするものです。
一般的に、次のようなメリット・デメリットが考えられます。

<メリット>
  • 患者さんが、薬について薬剤師から十分な説明が受けられ、薬の有効性・安全性が一層向上します。
  • 薬局では、患者さんの体質やアレルギー歴、今までに服用した薬、患者さんへの説明内容などの情報を記録していますので、副作用等の防止が図れます。
  • 病院薬剤師が、入院患者のための服薬指導など病棟業務に専念できます。
  • 患者さんの薬を受け取るまでの待ち時間が短縮されます。
<デメリット>
  • 患者さんは、病院と薬局を回らねばならないので、二度手間となります。
  • 病院の処方せん料や薬局の調剤基本料など患者負担が若干増えます。
Q2.
薬の保管について
薬はどこに保管すればよいのですか?
A.

 薬は高温と湿気と光に弱いので、直射日光が当たらない湿気の少ない涼しいところに保管することが大切です。
目薬やシロップ剤などは同じものを何度も使用するため、汚染を防止するために冷蔵庫に保管した方が良いです。
小さな子供がいる家庭では簡単に手が届くところに置かないようにしましよう。
家の中では北側の部屋で、押入れの下段の方に缶に入れ乾燥剤などを入れて保管しておくと良いでしょう。台所は湿度が高いので避けた方が良いでしょう。
冷所保存というのは15℃以下の保存を、室温保存は1~30℃での保存をいいます。冷所保存でもフリーザーに入れると薬によっては変質して効果が無くなるものもありますので、ご注意願います。

Q3.
薬の飲み方について
薬はどうして飲むのが適切なのでしょうか?
A.

 薬は、きちんと水またはぬるま湯(37度くらい)で飲むのが原則です。飲みにくいといってお茶やジュース、牛乳では飲まないようにしてください。薬によっては、ジュースやコーラに入っている炭酸や、牛乳のたんぱく質や脂肪が薬の成分と結びついて、変化する可能性があります。お酒やビールで飲むことも薬の作用に影響を与えたり、副作用を高めるので危険なことがあります。
また、薬を服用する時期と薬の性質は大へん密接な関係にあるので、次の服用時間はしっかり守りましょう。

  • 食前:食事の30分~1時間前の空腹時
  • 食直後:食事が済んだら直ぐに(胃腸障害を起こしやすい薬のことが多い。)
  • 食後:食事のあと30分くらい(胃腸障害の予防、飲み忘れの予防)
  • 食間:食後2~3時間後の空腹時(食事をしながらではない。)
  • 就寝前:寝る直前、または寝る30分~1時間前
  • 頓服:必要な時(痛みを止める、熱を下げる、咳を止める、便を出すなど)

 薬を飲み忘れたからといって、次に2回分をまとめて飲むのはやめてください。1回抜いたままにした方が無難なことが多いようです。不安な時には、医師や薬剤師に相談して、薬の服用方法・時間について指示されたとおりに飲みましょう。

Q4.
薬の剤形や使い方について
剤形や使い方の違いで効果がどのように変わるのですか?
A.

 薬の剤形には、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、点眼剤、軟膏剤、坐剤、注射剤など数多くの種類があります。
一般に最も速く効果が現れる剤形は注射剤で、次いで吸入剤、舌下剤、液剤、散剤、錠剤の順になっています。個々の製品や成分によっても効果の現れる時間が多少違っています。
錠剤やカプセル剤は、味の悪い薬や匂いの強い薬を飲みやすくするという利点があります。また体の中でゆっくり溶けることで効果が長時間持続するように工夫されている錠剤、カプセル剤、顆粒剤などもあります。カプセルを割ったり、 錠剤を噛み砕いたりすると速く溶けすぎたり、腸で溶かしたい薬が胃で溶けたりすることにより、期待する効果が現れないこともあるので注意してください。
鎮痛解熱剤の多くは、胃腸障害の副作用がありますので、空腹時に使用しない方が良く、使用する場合には少し食物を食べるようにしましよう。

Q5.
薬の吸収と代謝・排泄について
体の中で薬はどうなるのですか?
A.

 薬がその効果を現すためには、体内に吸収され症状を示す部位へ到達することが必要です。薬の吸収は、投与経路(内服、外用、注射など)によって、また薬の性質によって様々です。
内服薬の場合、大部分は小腸から吸収され、血液、リンパの流れによって全身に運ばれます。吸収された薬は体内にほぼ均等に移行すると考えられますが、脂肪に溶けやすい薬は、脂肪組織や脂肪の多い神経系に比較的よく集まります。内服すると胃酸で分解されてしまったり、ある種の薬は胃に負担をかけて胃を荒らす場合もあります。(このようなときには坐剤や注射剤が投与されます。)
坐剤は直腸下部の粘膜から吸収され、胃などの消化管を通らずに血中へ入ります。一部の坐薬では腸管循環により消化管の副作用が現れることもあります。
注射剤は直接血液中に薬物を移行させることができます。そのほか局所的な作用を目的として、皮膚、目、耳、腺等に外用として用いる薬も数多くあり、病気の状態により、投与経路や性質によって薬は使い分けられています。
薬が吸収されて生体内に入り、薬理作用を生ずると同時に生体内では薬を変化させて体外に排泄しようとします。この変化は広い意味での解毒作用といえます。この体内変化をしたものが薬効を示す薬もあります。
一般に薬物が治療効果を現した後、代謝を受けて体外へ排泄されるときは、水に溶けやすい物質に変えられ尿中へ運ばれます。ビタミン剤など一部の薬を飲むと尿に色がつくことがあります。尿中以外にも、造血剤や下痢止めの薬などは腸管へ排泄され、大便に混じり便を黒変させることもあります。薬物はこれら以外にも呼気とか唾液、汗などにも排泄されることが知られています。また、乳腺へ移行し乳汁中に排泄される薬物も知られております。
薬の吸収と代謝・排泄のバランスから薬の作用時間が決まります。薬の構造を変えたり製剤上の工夫をしたりして、作用時間を長くする製品も発売されています。

Q6.
薬の副作用について
副作用はどうして起きるのですか?
A.

 薬は本来、われわれの体にとっては異物です。これを上手に、しかも安全面に十分注意して有効に利用しているのです。
薬は長い年月と費用をかけて有効性と安全性がチェックされています。いくら有効な物質であっても、安全性が確保されない場合には医薬品として認められません。正しい使用方法により、有効で安全であると判断されたものだけが医薬品として流通させることができます。
したがって間違った使用方法や不適正な使用量の場合などには有害作用、いわゆる副作用が現れることがあります。またわずかではありますが、安全性に十分注意しながら使用しているにもかかわらず、副作用が現れる場合もあります。特にアレルギー反応による発疹や発熱などが代表的な例です。また副作用は個人差が大きく影響します。年齢、体質、性別、人種差、病気の種類など様々な要因が関係します。
薬の副作用をより少なくするためには、まず薬を正しく使用することです。一般用医薬品であれば、添付されている使用上の注意をよく読んで、理解したうえで用いることが大切です。
また病院より処方された薬は、薬袋に書かれている指示どおりに使用してください。少しでも疑問な点があるときは遠慮なく薬剤師におたずねください。また過去に薬を飲んでアレルギーなど副作用が現れたことがあれば、受診されたとき医師にその薬剤名を必ず伝えてください。他病院や他科に受診して別の薬を使用している場合や、一般用医薬品を使用している場合なども必ず医師に伝えるようにしてください。
副作用と思われる症状(発疹、発熱、吐き気、下痢、めまい、けいれんなど)が現れた場合には、まず担当医師や薬剤師に相談してください。

Q7.
薬の有効期間について
薬はどれくらい長持ちするのですか?
A.

 薬の外箱には有効期間や使用期限が表示してあります。適切な保存条件下において、その期限内であれば、性状及び品質に変化はありません。(ただし3年を超えても性状及び品質が安定な医薬品は、表示しなくても良いことになっています。)
容器などに開封したときの日付を書いておくと、使用するための目安になります。品質が安定な期間は、一般に開封後約6ヵ月位と考えておいた方が無難なようです。
使用期限内でも保存状態が悪ければ変質してしまっていることもあります。外観が変化しているような場合には使用するのは差し控えましょう。
救急箱などに入れて保管している場合には、半年に一回くらいは期限切れや変色などの点検をしましょう。特に目薬やシロップ剤は雑菌やカビが混入すると、薬剤の水分や糖分によって、どんどん繁殖して増えることもあります。長く使わなかった場合には惜しまずに廃棄しましょう。

Q8.
小児への薬の投与について
小児に薬を与える時はどんなことに気をつけたら良いのでしょうか?
A.

 粉薬の場合は、少量の水で口の中をうるおし、粉薬を口の中へ入れて、コップ一杯の水またはぬるま湯を飲ませます。あるいは少量の水、ぬるま湯などで練り、頬の内部や上あごにこすり付けて飲ませます。また適量の水、ぬるま湯で溶かし、スプーンやスポイトで少量ずつ、なるべく口の奥に流し込みます。1回分をミルクの中に溶かしこんで与えると、飲み残したり、ミルクの味が悪くなってミルク嫌いになることがありますので、気を付けましょう。
シロップ剤の場合は、かるく振って中味を均一にし、計量カップ等で計り、乳児にはスプーンやスポイトなどで頬の内側に落として少しずつ飲ませ、口直しに水やぬるま湯を飲ませます。使った計量カップ等はきれいに洗っておきましょう。
錠剤・カプセル剤の場合は、コップ一杯の水またはぬるま湯と一緒に飲ませます。飲んだ後、口の中に錠剤が残っているかどうかチェックしましょう。お子さんを座らせた状態で飲ませてください。(寝かせたままで飲ませると窒息する恐れがあります。)
坐薬の場合は、先のとがった方を肛門にあてて坐薬を一気に入れます。入れたら10秒程押さえていてください。挿入してから15分くらいで溶け、4~5時間効果が持続していますから、効き目が現れないからといって直ぐに、2個目を入れないでください。
塗り薬の場合は、患部をきれいにし、保護者の手指もきれいに洗い、適量を指先に付け、医師から指示のあった部位に塗ります。そしてよく延ばしてください。
発赤、じんましん、元気がない、ふるえなどいつもと違う様子が見られた時には、できるだけ早く医師や薬剤師に相談しましょう。

Q9.
高齢者の薬の服薬について
高齢者が薬を服薬するときには、どんなことに気をつけたらよいのでしょうか?
A.

 高齢者では腎臓や肝臓の機能が低下してくるので、薬の代謝や排泄が悪くなり、薬の効力が増強して効き過ぎたり、薬が体内に長く貯留したりして、予期せぬ副作用を起こすことがあります。また、高齢の患者さんでは、様々な疾患を併発することが多く、服薬する薬の種類も多くなり、思わぬ薬剤の相互作用を引き起こす可能性も高<なります。そのため、高齢者は副作用の発生が若い人に比べて多いのです。
病院や診療所で受診する時は、まず今の身体の具合や飲んでいる薬を医師や薬剤師に正確に伝えてください。
薬を飲む時は、量と時間を必ず守り、コップ一杯程度の水かぬるま湯で飲んでください。なお、固い包装シートに入っている薬はシートから出して飲んでください。薬を飲み忘れたら、直ぐ飲んで次回に飲む時間を遅らせてください。ただし、次ぎに飲む時まで余り時間がない場合は、1回飲むのをやめてください。2回分を一度に飲むのは絶対にやめましょう。
薬を飲んでいる間に発疹、発赤、かゆみ、むくみ、ねむけ、動悸、めまいなど「なにか変だな。」と感じたら、直ぐに医師や薬剤師に相談しましょう。

Q10.
目薬の使い方について
目薬の上手なさし方はどうすれば良いのですか?
A.

 まず手をきれいに洗います。それから眼球を押さえないように指で下瞼を軽くひき、容器の先が瞼やまつげに触れないように1滴を滴下します。点眼後は1分間くらい、まばたきをせず静かに眼を閉じ、軽く目頭を押さえたりしてください。眼から流れ出た点眼液は、清潔なガーゼやティッシュで拭き取ってください。
2種類以上の目薬を使用する時は順序に決まりはありませんが、点眼間隔を5分間程度開けてください。それから開封後は汚染の危険性もあるため、5mL容器では1カ月くらいを使用の目安にしてください。ただし、浮遊物や濁りが認められた時は、1カ月以内でも使用しないでください。
目薬は眼の結膜嚢というところに入り、効果を現わします。結膜嚢は、点眼剤1滴の8割くらいしか受け入れませんので、1滴で十分効果があります。結膜嚢に入りきらない点眼液は眼からあふれるか、あるいは鼻涙管を通って鼻から喉へ排出されます。

Q11.
目薬の使用量について
薬剤師さんから目薬は1滴で十分といわれましたが、それで良いのでしょうか?
A.

 目薬は涙と混ざり合った後、主に角膜を透過して目の中に移行していきます。目薬の1滴の量は約50µLですが、結膜嚢の最大容量は約30µLです。そして結膜嚢には涙液が常時7~10µLありますので、収容できる点眼量は20~23µLとなります。目薬1滴の半分近くは結膜嚢外にあふれるか、あるいは涙点から吸い込まれて、涙嚢、鼻涙管を通って鼻から喉へ排出されてしまいます。
また、目薬を何滴点眼しても、眼内の薬物濃度は変わらず、あふれ出た成分や保存剤により、かえって目のまわりに炎症等を起すこともあります。
従って、1回の目薬の量は1滴入れば十分であり、1滴以上は全く無駄になるということになります。

Q12.
健康食品について
体の調子が悪いので、健康食品を飲んでみようと思いますが、良いでしょうか?
A.

 健康食品は薬とは違います。薬は基準に従い臨床試験を行って、人の病気に対する効果と安全性をきちんと調べてあります。しかし、いわゆる健康食品といわれるものは、民間薬として使われていたものや動物実験で効果があったといわれているものなどを原料としており、人の病気に対する効果や飲む量、安全性などについて詳しく調べてありません。一般に流通している豆腐やコンニャクなどの食品と同じように、単に食品としての基準を満たしたものが製造・販売されています。従って、病気の治療を目的としたものではないので、あまりお勧めすることはできません。
効果があったという人がよくいますが、多分に心理的効果が大きい割合を占めているものと考えられます。例えば、薬の治療効果を調べる時に、乳糖のように治療効果のない成分と薬とを比較することがありますが、乳糖のように効果のない成分でも治療効果が現れることがあります。(これをプラセボ効果といいます。)効果がないようであれば直ぐやめて、医師の診察を受けられた方が良いと思います。

Q13.
漢方薬の副作用について
漢方薬は副作用の心配がないって本当ですか?
A.

 「漢方薬は副作用の心配がないので、自分の判断で飲んでも大丈夫。」と思っていませんか。漢方薬といっても、副作用や相互作用は起こります。
漢方薬は患者の体質や状態(証といいます。)によって使い分けられています。証が合っていないと、効果がないだけでなく、思わぬ副作用を起こす場合もあります。また、相互作用についても同じで、飲みあわせによっては重い症状を引き起こすこともあります。
漢方薬についても医師や薬剤師からしっかり説明を受け、また、薬局・薬店で漢方薬を貫う場合も十分説明を受けて、正しく服用しましょう。

Q14.
「食間」について
薬を「食間」に飲むように指示されたのですが、いつ飲めば良いですか?
A.

 「食間」とは、食事と食事の間のことをいい、食事をとってから2~3時間が経過した時期を指します。決して食事中に服用するという意味ではありません。間違わないようにして下さい。
この服用時間は薬の性質に基づき決められていますので、定められた時間に飲まないと効果が弱められたり、不都合を生じたりします。
例えば、胃に食物がない時に服用したほうが効果的である漢方薬などでは、この「食間」服用が指示されることがよくあります。アスピリンのように胃に負担をかける薬を「食間」に服用すると胃の調子が悪くなる方もあります。また利尿剤は、しばしば朝食後に服用するよう指示されますが、それを就寝前に服用すると、夜中にトイレに何回も起きなければならなくなってしまいます。服用時間はしっかり守りましょう。

Q15.
薬の飲み忘れについて
食前に飲む薬を食後に飲んだらどうなりますか?
A.

 薬の服用時間は、いつ飲むと吸収がよく効果があるか、いつ飲むと一番のみ忘れがないかなどによって決められています。大部分の薬は、食前・食後・食間とも吸収にあまり差がないので、一番飲み忘れが少ないとされる食後服用となっています。
しかし、薬の性質によって必ずその時間に服用しなければならないものもあります。例えば、食欲を抑える薬や食物の消化・吸収を遅らせる薬は、食前に服用しないと効果が得られません。また漢方薬は食後に服用すると不快を訴える人が多いためと効果を高めるために、一般に食前や食間に服用するようになっています。消炎鎮痛剤など胃を荒らしやすい薬は食後の方が胃への負担が少ないので、食後服用とされることが多い。
また、体の中に常に一定量の成分を維持しなければならない薬は、等間隔服用とすることがあり、食事と関係なく服用時間が決められています。
食前に飲む薬を飲み忘れて、食事中・食後に飲むのはやむを得ないと思います。ただ薬を飲む間隔が開きすぎると効果が薄れ、間隔を縮めると副作用が現れることがありますので、自分勝手に服用時間を変えるのはやめましょう。もしどうしても都合が悪いときは、医師や薬剤師に相談してください。

Q16.
薬の購入について
病院でもらった薬は薬局で買えないのでしょうか?
A.

 薬を手に入れるには大きく分けて2つの方法があります。一般用医薬品を薬局で買い求める方法と医療用医薬品を医師により処方してもらう方法の2種類です。
一般用医薬品は、体の調子が悪いときに医師に診てもらわないで、自分の判断で薬局で購入して用いる薬です。誰でも自由に買うことができます。
医療用医薬品は、医師の診察を受けた後、病院や診療所で直接調剤してもらうか、処方せんにより薬局で調剤してもらう薬です。医療用医薬品は医師の指示があった場合か、処方せんがなければ求めることはできません。
しかし、今まで医療用医薬品であったものが、一般用医薬品と同じように薬局で購入できるようになった薬もあります。この薬は一般にスイッチOTC薬といわれています。
よくテレビ等で耳にされるH2ブロッカー(消化性潰瘍治療薬)がその例です。これらを購入する際には、使用方法や副作用のみならず飲み合わせや重複について十分注意を払う必要がありますので、薬局の薬剤師とよく相談してください。

Q17.
余った薬について
余った薬はどうすればよいのですか?
A.

<市販の薬の場合>
 薬の使用期限は、適切な保存条件下で3年以内に性状及び品質が経時変化を起こす恐れのあるものは、使用期限を記載しなければならないことになっており、3年経過後も性状及び品質が安定なものは、記載しなくてもよいことになっています。
そこで、期限を過ぎた薬や、いつ開けたか分からなくなってしまった薬は、思い切りよく処分しましょう。(1年に1回は薬箱の定期点検をしましょう。)

<病院の薬の場合>
 患者さんの容態に合わせて処方された薬ですから、同じような症状だと思い他人にあげたり、他人からもらったりしないようにしてください。そして疾病が治癒した後も、もしもという時のために薬を残しておくということはしないで、すみやかに処分しましょう。
開封後の薬の期限は薬によっても多少の違いはありますが、正しい保管状態で約6カ月位が目安だといわれています。もったいないと思わずに処分し、再び身体の具合が悪くなった時は新たに医師の診察を受けるようにしましょう。

Q18.
薬の説明文書について
薬局で、調剤した薬についての説明文書をくれるのですが、飲み合わせの悪い薬や副作用がたくさん書いてあり、不安になってしまいますが?
A.

 各医療機関や薬局では、患者さんに薬の説明文書をお渡しし、飲み合わせの悪い薬や副作用についてあらかじめ知っていただき、服用の際には十分注意して貰らうようにしています。これは薬の安全性を一層向上させるためのものなのです。説明文書に書いてある内容について疑問や不安になられることがあれば、医師や薬剤師に遠慮なく相談してください。

Q19.
インフオームドコンセントについて
インフオームドコンセントというのはどういう意味でしょうか?
A.

 インフオームドコンセントを直訳すれば「十分な説明を受けた上での同意(患者さんの了解)」と言われています。医師は治療法や薬の内容について、患者さんに十分な説明を施し、患者さんの同意を得た上で、治療をするというものです。患者さんの自覚を促し、治療の効果を一層上げるためにも絶対に不可欠なものです。
インフオームドコンセントについては、もっと定着しなければなりません。薬についても、どんな性質を持った薬か、どんな目的を持って飲んだらよいのかなどを、医師が患者さんにきちんと説明していく必要があります。また、患者さんの方も、ただ薬をもらって漫然と飲むだけではなく、どんな特徴の薬で、どういう形で飲むのが一番効果的かについて、医師と十分なコミュニケーションが図られれば、薬はより大きな効果を発揮します。

Q20.
肺炎球菌ワクチンについて教えてください。
A.

 商品名:ニューモバックス®(萬有製薬が輸入販売)で、肺炎を起こす原因菌の一つである肺炎球菌の一部を用いてつくられたワクチンです。肺炎球菌には約90種類もの莢膜型が存在していますが、その内の23種類の莢膜ポリサッカロイドを含み、肺炎球菌感染症の約80%を予防することができます。
投与対象者は、2歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い次のような個人及び患者です。

  1. 脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防
  2. 肺炎球菌による感染症の予防
    1. 鎌状赤血球疾患、あるいはその他の原因で脾機能不全である患者
    2. 心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏等の基礎疾患のある患者
    3. 高齢者
    4. 免疫抑制作用を有する治療が予定されている者で治療開始まで少なくとも10日以上の余裕のある患者

 肺炎球菌ワクチンの有効率は約60~80%で、約5年間は継続するといわれています。現在のところ、再接種は認められておりません。これは、再接種の際の副作用(主に注射部位の腫れなど)が、初回よりも強く現れることがあるからです。米国では、高齢者やHIV感染者などで免疫力が低下している人、ネフローゼ症候群の小児などで、初回接取から5年以上が経過している場合に再接種が認められるようになりました。
L.A.Jacksonらは、「肺炎球菌ワクチン接種は、肺炎球菌性血症のリスクの減少と有意に関連したが、肺炎による入院リスクのわずかな増加とも関連した。また、外来患者肺炎のリスクやあらゆる市中感染性肺炎のリスクを、入院の必要があったか否かに関わらず、変化させなかった。」と研究報告しています。肺炎の約70%は非菌血症であるので、代替となる予防法が必要であると示唆しています。
肺炎に限らず感染症の予防には、「手洗い・うがい・規則正しい生活」を行うことが重要で、その上で肺炎球菌ワクチンの接種を勧めるのが良いと思われます。

参考:日本と富山県におけるワクチン出荷量
  2002年 2003年
日本 約15万人分 約17万人分
富山県 925本 779本

参考)N Engl J Med 2003;348:1747-55:Original Article
予防接種に関するQ&A 2003年版(細菌製剤協会)
萬有製薬ホームページ
社会保険健康事業財団ホームページ
Q21.
蜂に刺されたときにどのようにすればよろしいのですか?
A.

 蜂の種類は多いが、よく刺す蜂は、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ、クロスズメバチ(ジバチ、ツチスガリ)である。1989年から10年間に蜂に刺されて死亡した人は平均32名で、有毒動物による死亡の中では圧倒的に人数が多い。約8割はスズメバチによるものと推定される。
蜂刺傷のほとんどが7~10月だが、1月に発生したという報告もある。
ハチ毒の成分は、表1のとおりである。ミツバチ毒の生体アミンの主なものはヒスタミンであるが、アシナガバチやスズメバチではこれにセロトニンが加わる。いずれも本来の薬理作用以外に発痛物質としても有名なものである。

表1:ハチ毒中の生理活性物質
  生体アミン ペプチド 酵 素
ミツバチ(Apis) ヒスタミン
ドパミン
ノルエピネフリン
メリチン
アパミン
MCDペプチド
ホリホリパーゼA
ホリホリパーゼB
ヒアルロニダーゼ
アシナガバチなど (Wasp) ヒスタミン
ドパミン
セロトニン
ノルエピネフリン
ポリステスキニン
ベスプラキニン
σ-フィラントトキシン
マストパラン
ホリホリパーゼA
ホリホリパーゼB
ヒアルロニターゼ
スズメバチ類(Vespa) ヒスタミン
セロトニン
アセチルコリン
ホーネットキニン
マストパラン
マンダラトキシン
ベスパキニン
ホリホリパーゼA
ホリホリパーゼB

プロテアーゼ

 症状は局所症状と全身症状に分けられる。また、ハチ毒素のものによる中毒症状と、アレルギー反応による症状とに分けることもできる。年間32人の蜂刺されによる死者の大部分は、アナフィラキシー反応によるものである。刺される場所は、腕、手、顔面、頭部、背部、下腿の順に少なくなる(小川原1986)。腕が多いのは、顔に向かってくる蜂を払いのけようとするからといわれている。
応急処置として、ミツバチは刺したあとに頭に毒嚢がついた針を残すので、針が残っていたら爪ではじき飛ばす。(指でつまむと、毒嚢を押して毒液を注入してしまうため)また蜂に刺されたあとはよく洗い、抗ヒスタミン軟膏を塗って水で冷やす。アンモニア水はあまり意味がなく、高濃度のものを長時間使用して指が壊死に陥った例もある。
アナフィラキシー反応の恐れがあるときは、刺された直後にエピネフリンを0.2~0.5mL皮下注射する。アメリカでは自己注射器を以前より携帯していたが、本邦では昨年8月にようやく「エピペンR注射液0.3mg(メルク)」が販売された。刺されて15分以内におきるアナフィラキシーショックを予防、軽減するには現在のところこの方法しかなく、人里離れた山の中から病院へ行くまでに数時間もかかることもあり、蜂に刺される機会の多い人(林業に携わっている人、山菜をとる人など)は携帯すべきであるとされている。ただし、使用する際は処方医師の登録等が必要で、詳しくはメルク社mRまたは同社くすり相談室までご連絡ください。またジフェンヒドラミン50mgの内服、30mgの筋注も刺された直後であれば効果が期待できる。
林業の方などは講習会などもあり知識があると思われるが、一般の人はほとんど知らないので山菜をとりに行かれる方などへの啓蒙が必要と思われる。

参考図書:蜂刺されの予防と治療(林業・木材製造業労働災害防止協会)
薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂7版(医薬ジャーナル社)
中毒百科 事例・病態・治療 改訂第2版(南江堂)
※メルク株式会社おくすり相談室(TEL:0120-933-911)

Q22.
抗結核薬を使用して治療中に発疹、発熱等の副作用が発現しました。
どのようにすればよろしいですか?
A.

 一般細菌による感染の場合は、単剤投与で治療可能な場合が大半であり、副作用出現の場合は、他の薬剤に変更すれば良い。しかし結核の場合はイソニアジド(INH)やリファンピシン(RFP)に変わる有効な薬剤はなく、これらが使用できないと標準療法が行えない。
発熱や発疹といったアレルギー性機序の副作用では、減感作療法を行うことで投与が可能となることがあり、日本結核病学会では平成9年に試案を作成し、減感作療法を勧めている。本症例もこれに従うと良いと思われる。
以下、INH、RFPに対する減感作療法の試案について記載する。

(日本結核病学会治療委員会)
  INH RFP
第1日
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
25(mg)
25
25
50
50
50
100
100
100
200
200
200
300
300
300
400
25(mg)
25
25
50
50
50
100
100
100
200
200
200
300
300
300
450

 INHまたはRFPの使用によって、発熱あるいは発疹の副作用が出現した場合には、右記の方法により減感作療法を行う。
まず、速やかに当該薬剤を中止し、副作用に対する適正な治療を行う。
同時に、リンパ球刺激試験(DLST)や白血球遊走阻止試験を同定する。
その結果、あるいは臨床状況から原因と考えられる薬剤が見られた場合には、副作用が改善した後、表に示すような方法によって減感作療法を施行する。
なお、両剤に対して副作用が見られる場合には1剤ずつ減感作療法を行う。

参考文献:
日本結核病学会治療委員会:抗結核薬の減感作療法に関する提言.
結核.1997:72:697
小橋 吉博他:抗結核薬に対する減感作療法について-ガイドラインに沿った治療成績-
結核.2000:75:699

Q23.
医薬品の副作用について検索できるホームページはありませんか?
A.

 患者様が「薬を飲み始めてから調子がおかしくなった。」と言われて、添付文書を確認したけど、その症状について何も書いてないということありませんか?
このようなときに一度確認していただきたいのが、医薬品医療機器情報提供ホームページ(http://www.info.pmda.go.jp/)「副作用が疑われる症例報告に関する情報」です(図1)。
例えばアカルボース(商品名:グルコバイ)を服用していた患者様で、「最近おしっこの出が悪い。」と言われて、添付文書を確認してみたところ「頻尿」はあるけど「排尿障害」は記載されていない。そのようなとき、当ホームページにアクセスして「アカルボース」もしくは「グルコバイ」と入力してみてください(図2)。厚生労働省に報告された副作用症例の簡単な概要を検索できます。今回の症例の場合、「未知症例」の中に「排尿障害」「排尿困難」が記載されています(図3)

図:医薬品医療機器情報提供ホームページ「副作用が疑われる症例報告に関する情報」の使い方
図:医薬品医療機器情報提供ホームページ「副作用が疑われる症例報告に関する情報」の使い方

  • 未知症例:副作用が疑われるとして報告された重篤な症例のうち未だ十分な情報がなく、当該被疑薬の使用上の注意への記載に至っていないため、今後注目して同様の症例報告をお願いしたい症例に関する情報。
  • 既知症例:副作用が疑われるとして報告された症例のうち使用上の注意の改訂の際、参考とした症例に関する情報を提供するとともに、症例の経過等がわかる詳細情報。
  • 報告副作用一覧:上記の未知症例及び既知症例に記載されている症例を含む全報告症例について、医薬品ごとに副作用名別の件数を報告年度ごとに掲載。
    平成15年7月30日から医薬品や医療用具による健康被害から国民を守るための国への安全性情報の報告が制度化されました。したがって今回のような未知症例リストと同様の症状を示す例があれば、必ず厚生労働省に「医薬品医療用具の安全性情報報告」を行いましょう。
Q24.
アスピリン喘息の患者様に使える解熱鎮痛剤は何かありますか?
A.

 アスピリン喘息とは、アスピリンに代表される酸性非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)・解熱鎮痛剤によって発作が誘発されるといわれている。
発症機序はアスピリンなどがアラキドン酸代謝に関係する酵素、シクロオキシゲナーゼを阻害するため、その結果ロイコトリエンが過剰に産生し喘息発作がおきると考えられている。そのためロイコトリエン拮抗薬が使われる。

特徴は、

  1. 成人の喘息の約10%に出現する。
  2. 20~50代に多い。女性にやや多い(男:女=2:3)。
  3. ときに意識障害をきたすほどの大発作になり、死ぬこともある。
  4. 重症で治りにくくなることがある。
  5. 鼻茸(鼻ポリープ)や蓄膿(副鼻腔炎)を合併していることが多い。
  6. 嗅覚が低下していることが多い。
  7. 原因物質が体に入ってから、数分~1時間以内に喘息発作が起こる。
  8. 通年性であり、季節性はない。などが挙げられる。

 アスピリン喘息を誘発するといわれる物質の一部を下記の表に示すが、酸性抗炎症薬のほかに、医薬品添加物、食品、食品添加物と様々であり、湿布薬でも喘息発作が誘発される場合もある。 
アスピリン喘息患者様が熱や痛みのあるときは、塩酸チアラミド(ソランタール)、メビリゾール(メブロン)、サリチルアミド(PL顆粒)、アセトアミノフェン(アンヒバ、カロナール)などが比較的安全といわれる。しかしアセトアミノフェンは高用量(1000mg)を超えると過敏反応を誘発するといわれ、またどの薬剤も添付文書では全て「禁忌」となっているので注意が必要である。(参考)喘息予防・管理ガイドライン1998

(表.アスピリン喘息発作誘発物質)
分類 薬剤名・物質名 薬剤の商品名など
NSAID アスピリン バファリン
  メフェナム酸 ポンタール
  ジクロフェナク ボルタレン
  インドメタシン インテバン
解熱鎮痛剤 スルピリン メチロン
コハク酸エステル化合物 コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム サクシゾン
食品・医薬品添加物 パラベン 吸入用去痰剤の一部
  黄色4号 内服薬やシロップの着色料
  安息香酸ナトリウム 各種注射剤
  亜硫酸塩 赤ワイン
その他 香水、化粧品、防虫剤、防カビ剤、シャンプー等
自然界のサリチル酸塩 香辛料、カレー、ソース、果実、野菜などにも含む
Q25.
「糖尿病診療ガイドライン」の血糖コントロールの指標と評価が変わったそうですが、どこが変わったか教えてください。
A.

 今年(2004年5月)の糖尿病学会で「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」1) が発表され、その中で「血糖コントロールの指標と評価(表1)」のHbA1C値が変更されました。
今まで「可」であった6.5~8.0未満が2つに分けられ、6.5~7.0未満が「不十分」、7.0~8.0未満が「不良」となりました。

表1:血糖コントロールの指標と評価
指 標 コントロールの評価とその範囲
不可
不十分 不良
HbA1C(%) 5.8未満 5.8~6.5未満 6.5~7.0未満 7.0~8.0未満 8.0以上
6.5~8.0未満
空腹時血糖値(mg/dL) 80~110未満 110~130未満 130~160未満 160以上
食後2時間血糖値(mg/dL) 80~140未満 140~180未満 180~220未満 220以上

 血糖コントロールが「可」とは、治療法の変更を要する状態では必ずしもないが、それまでの治療の徹底により「良」ないしそれ以上に向けて改善努力を行うべき領域です。なお、HbA1Cと細小血管症出現との関係には連続性が認められたこと2.3)、また、諸外国においてHbA1C7.0%未満が血糖コントロールの目標として採用されていること2)を鑑み(ただし、7.0%という 数値はevidenceに基づくものではない)、7.0%未満が血糖コントロール「可」の中でもよりコントロールがよい方を「不十分」となり、他が「不良」となりました。また、この境界の血糖値は定めないとしています。
妊娠時(妊娠前から分娩まで)及び高齢者の目標として、それぞれHbA1Cが5.8%未満、7.0%未満とされていますが、高齢者に関しては平均寿命も延びており、今後さらに検討が必要であるとされています。

1) 日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン ,2004
2) American Diabetes Associaion:Standards of medical care for patients with diabetes mellitus. Diabetes Care 26(Suppl 1):S33-S50,2003
3) Wright A ,Burden AC, Paisey RB, Cull CA, Holman RR, United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group : Sulfonylurea inadequacy :Efficacy of addition of insulin over 6 years in patients with type 2 diabetes in the U.K. Prospective Diabetes Study (UKPDS57). Diabetes Care 25:330-336,2002

Q26.
薬の説明文書について
薬局で、調剤した薬についての説明文書をくれるのですが、飲み合わせの悪い薬や副作用がたくさん書いてあり、不安になってしまいますが?
A.

 低血糖症とは異常に低い血糖値(通常50mg/dL以下であるが80mg/dL以下で症状が出てくる。こともある)により引き起こされる交感神経系の刺激または中枢神経系の機能障害です。低血糖症の原因は、薬物性と非薬物性に分けられます。1)
添付文書の副作用の項に「低血糖」「血糖値低下」が記載されている薬剤は、インスリン注射や経口血糖降下薬以外にも表に示されるものがあります。主なものとしては、ニューキノロン系抗菌
薬、抗不整脈薬、β-遮断薬、サリチル酸誘導体などです。表に示されている薬剤以外にも抗糖尿病薬との相互作用で低血糖を誘発するものとしてワルファリンカリウムなども記載されています。
β-遮断薬は低血糖に対する交感神経系の症状(振戦、動悸等)をマスクし、低血糖を遷延させる可能性があります。
治療は、10gのブドウ糖または20gの砂糖またはそれと同じぐらいの糖質を含むジュースや清涼飲料(200mL~250mL)の経口摂取で十分と思われます。(最近では携帯性が優れ、飲みやすいブドウ糖のゼリーも発売されています。)したがって、抗糖尿病薬を使用している患者様には、常に砂糖袋等を携帯するように指導していただきたい。またそれ以外の薬剤を服用している患者様へも注意する必要があると思われる。

表:添付文書に「低血糖」「血糖値低下」が記載されている薬剤2)
抗 菌 薬
オゼックス錠150R、ガチフロ錠100mgR、クラビツト錠R、シプロキサン錠R、スパラ錠R、バクタ錠R、バレオン錠R、バクシダール錠Rなど
抗不整脈薬
シベノール錠100mgR、リスモダンカプセル100mgRなど
β-遮断薬
インデラル錠10mgR、ミケラン錠5mgRなど
サリチル酸誘導体
アスピリンなど
その他
トフラニール錠R、アミノレバンENR、ウテメリンR(新生児低血糖)、ゼフィックス錠100R、 セルセプトカプセル250R、フオイパン錠R、ベザトールSR錠R、リピトール錠10mgR、メルカゾール錠Rなど

1)日経BP社、メルクマニュアル第17版 日本語版
2)各薬剤の添付文書
Q27.
手術前に投与を中止しなくてはいけない薬剤を教えてください。
A.

 手術時に大量出血を起こさないように投与を中止しなくてはいけない薬剤があります。抗血小板剤のみでなく高脂血症治療剤や循環機能改善剤などにも抗トロンビン作用や血小板凝集抑制作用を有する薬剤があり、それらも中止する必要があると思われます。
今回は禁忌や慎重投与の項に「出血」が記載されている薬剤を中心に調査しました。各メーカーの意見として投与中止期間を載せましたが、COX-1阻害作用が可逆的か非可逆的の違いや半減期の長さ、作用の強さなどから中止期間が決められているようです。ここにはメーカーの意見として載せましたので、最終的には臨床において検査値や症状を見ながら決めていただければと思います。

手術前の投与に気を付ける薬剤一覧
薬 品 名 一 般 名 会 社 名 添付文書内容 メーカーの意見 半減期※
エパデール® イコサペント酸エチル 持田製薬 禁忌(出血している患者) 7~10日前に中止  
バイアスピリン® アスピリン バイエル 禁忌(出血傾向のある患者)
慎重投与(手術前1週間以内の患者)
7日前より中止を推奨(2日前でも可の場合あり) 0.44時間
パナルジン® 塩酸チクロピジン 第一製薬 禁忌(出血している患者)
慎重投与(出血傾向ならびにその素因のある患者)
7日前に投与中止(最低3~4日前) 約1.6時間
ワーファリン® ワルファリンカリウム エーザイ 禁忌(出血している患者、出血する可能性のある患者) 大手術(5日前より投与中止)小手術(4~5日前より凝固能を見ながら減量) 36.3時間
ロコルナール® トラピジル 持田製薬 禁忌(頭蓋内出血発作後、止血が完成していないと考えられる患者) 3~4日前  
mDSコーワ® デキストラン硫酸ナトリウム イオウ18 興和 慎重投与(出血性素因又は出血傾向のある患者) 2~3日前に投与中止  
プレタール® シロスタゾール 大塚製薬 禁忌(出血している患者)
慎重投与(出血傾向並びにその素因のある患者)
2~3日前に投与中止 2.2時間
コメリアン® 塩酸ジラゼプ 興和 特に記載なし 2~3日前より投与中止 約4時間
ケタス® イブジラスト 杏林製薬 禁忌(頭蓋内出血後、止血が完成していないと考えられる患者) 2日前に投与 12.0時間
ペルサンチン® ジピリダモール 日本ベーリンガーインゲルハイム 重大な副作用(出血傾向、血小板減少) 1~2日前より投与中止  
セロクラール® 酒石酸イフェンプロジル アベンティス 禁忌(頭蓋内出血発作後、止血が完成していないと考えられる患者) 1日前より中止 1.40時間
ドルナー® ベラプロストナトリウム 山之内製薬 禁忌(出血している患者)慎重投与(出血傾向並びにその素因のある患者) 1日以上前に投与中止 1.11時間
カリクロモン® カリジノゲナーゼ 日本医薬品工業 禁忌(脳出血直後等の新鮮出血時の患者) 1日前より中止  
オパルモン® リマプロストアルファデクス 小野薬品工業 慎重投与(出血傾向のある患者) 0~1日前より投与中止 7時間
PL®
幼児用PL®
サリチルアミド他 塩野義製薬 慎重投与(出血傾向のある患者) 注意して投与すること  
ポンタール® メフェナム酸 三共 慎重投与(出血傾向のある患者) 注意して投与すること  
LLシロップ® サリチルアミド他 和光堂 慎重投与(出血傾向のある患者) 注意して投与すること(判断できない)  
カリクレイン® カリジノゲナーゼ バイエル 禁忌(脳出血直後等の新鮮出血時の患者) 注意して投与すること  
インテバンSP® インドメタシン 住友製薬 慎重投与(出血傾向のある患者) 注意して投与すること  
サアミオン® ニセルゴリン 田辺製薬 禁忌(頭蓋内出血後、止血が完成していないと考えられる患者) 注意して投与すること  
ナイキサン® ナプロキセン 田辺製薬 慎重投与(出血傾向のある患者) 注意して投与すること 約14時間(8-16時間)
ブレディニン® ミゾリビン 旭化成 慎重投与(出血性素因のある患者) 注意して投与すること 2.2時間
ボルタレン®
ボルタレンSR®
ボルタレンサポ®
ジクロフェナクナトリウム ノバルティス 慎重投与(出血傾向のある患者) 注意して投与すること 1.2時間
2.28時間
1.3時間
ダーゼン® セラペプターゼ 武田薬品工業 慎重投与(血液凝固異常のある患者) 注意して投与すること  
クリノリル® スリンダク 萬 有 慎重投与(出血傾向のある患者) 注意して投与すること 3時間
パキシル® 塩酸パロキセチン水和物 GSK 慎重投与(出血の危険性を高める薬剤を併用している患者、出血傾向又は出血性素因のある患者) 注意して投与すること 約15時間
イムラン® アザチオプリン GSK 慎重投与(出血性素因のある患者) 注意して投与すること 1.9時間
イスコチン® イソニアジド 第一製薬 慎重投与(血液障害、出血傾向のある患者) 投与中止の必要なし  
ニバジール® ニルバジピン 藤沢薬品工業 禁忌(頭蓋内出血で止血が完成していないと推定される患者) 投与中止の必要なし 10.9時間
ズファジラン® 塩酸イソクスプリン 第一製薬 慎重投与(脳出血のある患者) 投与中止の必要なし 約1.5時間
ペリシット® ニセリトロール 三和化学研究所 禁忌(重症低血圧又は動脈出血のある患者) 投与中止の必要なし 2.4時間
ペルジピン® 塩酸ニカルジピン 山之内 禁忌(頭蓋内出血で止血が完成していないと推定される患者) 投与中止の必要なし 1.5時間
コレバイン® コレスチミド 三菱ウェルファーマ 慎重投与(出血傾向を有する患者) 投与中止の必要なし  
ブルフェン® イブプロフェン 科研製薬 慎重投与(出血傾向のある患者) 投与中止の必要なし 1.8時間
※半減期は、添付文書に記載されているもののみとしました。
Q28.
抗インフルエンザウイルス治療剤「タミフル®カプセル75」の予防投与について教えてください。
A.

 2004年7月に「タミフル®カプセル75」の添付文書が改定となり、【効能・効果】に「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の予防」が追加されました。【用法・用量】は、下記の表のとおりです。

  治  療 予 防
対 象 成人及び体重 37.5 kg以上の小児 成人及び13歳以上の小児
投与法 1回75mg 1日2回 1回75mg 1日1回
投与期間 5日間経口投与 7 ~10日間経口投与

 しかし【警告】には、「1.本剤の使用にあたっては、本剤の必要性を慎重に検討すること。2.インフルエンザウイルス感染症の予防の基本はワクチン療法であり、本剤の予防投与はワクチン療法に置き換わるものではない。」とあります。
また〈効能・効果に関連する使用上の注意〉の2.には、「予防に用いる場合には、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。(1.高齢者《65歳以上》、2.慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者、3.代謝性疾患患者《糖尿病等》、4.腎機能障害患者)」と記載されているので、本剤の予防投与は全ての人が対象ではないことを注意しなくてはいけません。
薬剤師としては、「1.用法(治療と予防の違い)、2.対象外使用(対象外の患者様に使われている可能性がある)、3.保険請求(予防投与は保険給付の対象外である)」の3点に気をつける必要があると思われます。なお、「タミフル®ドライシロップ3%」の予防投与は認められておりませんので注意が必要です。また、このような「インフルエンザワクチン」や「タミフル®」に頼りきりではなく、やはり感染症の予防には「1.うがい、2.手洗い」、これを励行されるように患者様には指導が必要です。
〈参考〉「タミフルカプセル75」添付文書

Q29.
インスリン自己注射をしている方でだんだんと視力が弱くなり、単位設定などが難しくなった場合、どのように指導すればよろしいでしょうか?
A.

「糖尿病は合併症の病気である」といわれるように、糖尿病の罹病期間が長くなると様々な合併症を発現する割合が高いです。三大合併症には網膜症・腎症・神経障害があり、その他にも心血管障害や脳血管障害などの大血管障害を発現することもあります。そのような場合でも正確かつ安全にインスリン注射を行っていただかなくてはなりません。

図1:視力障害者用補助器具「トマレット®」
図1:視力障害者用補助器具「トマレット®」

 2003年12月号に、高齢者の方にイノレット®を紹介しました。イノレット®は、高齢者のみでなく神経障害等で握力が弱くなった方にも使うことができます。今回のような視力障害者でも、軽度であればイノレット®のみで使用可能と思われます。しかし重度の場合や失明している場合には、かなり難しいと思われ、そのような方には視力障害者用補助器具「トマレット®(図1)」を試みていただきたい。
トマレット®はイノレット®に取り付ける補助具で、ボルト2本で止める可変式の金属片(ストッパー)があり、指示単位のところでダイアル(注入ボタン)が止まるようにストッパーを設定できるようになっています。これにより指示単位以上の設定ができなくなり、視力障害者でも確実に自己注射ができます。さらにトマレットには右利き用・左利き用があり、また手で触れるだけで朝・昼・夕の器具の区別が可能となるようにボルトがついています。

図2:ペンニードル®リムーバー2
図2:ペンニードル®リムーバー2

 注射後は「ペンニードル®リムーバー2(図2)」を用いることによって、安全に針の取り外しを行うことができると思います。

問合せ先
・ トマレット®:メディックス
TEL:092-626-8022、FAX:092-626-8060
・ ペンニードル®リムーバー2:ノボ ノルディスク ファーマ

参考資料
・ DITN 第301号「障害があってもインスリン自己注射を 患者の声に耳を傾け補助器具を開発」 2003年3月15日発行

Q30.
トランスポーターについて教えてください。
A.

 トランスポーター(薬物輸送タンパク)は、代謝と同様に薬物療法に大きく寄与することが指摘されています。腸管など臓器からの吸収、その後の肝臓や脳などの主要臓器への分布、腎を介した体外への排泄など、薬物の体内動態において重要な役割をはたしています。
代表的なものとしては、P-糖タンパクがあり、消化管上皮細胞、脳毛細血管、内皮細胞など広く発現しています。P-糖タンパクは広範囲な薬物を基質とすることから、代謝酵素と同様に誘導や阻害に基づく相互作用を生じやすいと考えられています。グレープフルーツジュースは多くの薬物のチトクロムP450(CYP)3Aによる代謝を阻害し血中濃度を上昇することは有名ですが、P-糖タンパクも阻害することが最近の研究で明らかとなっているそうです。
P-糖タンパク基質薬物でマクロライド系抗生物質の併用によって血中濃度が上昇するものは、ジゴキシン、フェキソフェナジン、アトルバスタチン、シクロスポリンなどが挙げられます。
トランスポーターはCYPと共に薬物併用に関して注意が必要と考えられます。

表1:主なトランスポーターの発現部位と基質薬物
トランスポーター 主な発現部位 基 質 薬 物
P-糖タンパク
(mDR1)
小腸、肝臓、腎臓、胎盤、精巣、脳 ジゴキシン、ジギトキシン、ベラパミル、シクロスポリン、タクロリムス、コルヒチン、ロペラミド、インジナビル、キニジン、ネルフィナビル、サキナビル、オンダンセトロン、ビンブラスチン、エトポシド、ドキソルビシン、レボフロキサシン
mRP1 肝臓、腎臓、脳 メトトレキサート、葉酸
mRP2 肝臓、腎臓、小腸 メトトレキサート、葉酸、プラバスタチン、テモカプリラート
OATP-A 肝臓、脳 フェキソフェナジン、キニジン
OATP-C 肝臓 プラバスタチン、リファンピシン、ベンジルペニシリン、チロキシン
OAT1 腎臓、脳 非ステロイド性抗炎症薬、プロスタグランジンE2、βラクタム抗生物質
OCT1 肝臓 ドパミン、メトフォルミン
OCT2 腎臓 ドパミン

〈参考〉
薬局 Vol.54, No.11(2003) p.15~p.31
ファルマシア 2003年5月号
Q31.
SSRIとSNRIの違いについて教えてください。
A.

 うつ病の原因は、まだよく分かっていないのですが、脳内の「神経伝達物質」が関係しているといわれています。その伝達物質とは、「セロトニン」と「ノルアドレナリン」でこれらの量が減少すると、うつ病になったり、不安感が強まったりすると推測されています。
セロトニンやノルアドレナリンは、一方の神経細胞の末端から放出されて、もう一方の神経細胞の末端に取り込まれますが、一部は放出した神経細胞に再び取り込まれてしまいます。この再取り込みが神経間におけるセロトニンやノルアドレナリン量の減少原因の一つと考えられています。  
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)とSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)はこれら伝達物質の再取り込みを抑えることにより、脳内の量を増やし、情報の伝達効果率を向上させることで、“うつ”と呼ばれるような憂鬱な気分や落ち込んでいる気分を和らげる働きがあります。
効能・効果及びP450各分子種に対する阻害作用(表1)、副作用の特徴(表2)について下記にまとめます。

表1:SSRIとSNRIの効能・効果とP450各分子種に対する阻害作用

分  類

SSRI SNRI
一 般 名 マレイン酸フルボキサミン 塩酸パロキセチン 塩酸ミルナミン
商 品 名 ルボックス®
デプロメール®
パキシル® トレドミン®
効能・効果 うつ病、うつ状態
強迫性障害
うつ病、うつ状態
パニック障害
うつ病、うつ状態
P450各分子種に対する阻害作用 1A2 +++ -
2C9 ++  -
2D19 +++ -
2D6 +++ -
3A +++ -
(各添付文書、樋口輝彦 日本臨床内科医会会誌 2002 より改変)

表2:SSRIとSNRIの副作用の特徴
SNRIでSSRIより2倍以上多い副作用 SSRIでSNRIより2倍以上多い副作用
頭痛 (8.4% vs 4.1%)
口渇 (7.9% vs 3.8%)
排尿障害 (2.1% vs 0.3%)
悪心 (20.1% vs 11.2%)
下痢 (3.5% vs 1.6%)
血圧低下 (2.3% vs 1.0%)
(Montgomery el al,1996より改変)
Q32.
抗糖尿病薬とアルコールの関係について教えてください。
A.

 糖尿病患者とアルコールの関係はとても重要です。アルコールは高カロリー・無栄養素でああることや低血糖が心配されるため、禁酒を勧められるかもしれません。しかし、実際に患者様が止められるかとなると非常に難しいと思われます。そこで、医療従事者による十分な説明が求められてくる訳です。
糖代謝に及ぼすアルコールの影響は複雑で完全には解明されていませんが、耐糖能に対する影響として、アルコールが糖新生とグリコーゲン合成を阻害することが考えられています。しかし、実際の生活では、アルコールだけを飲み、食事をしないということは稀であり、食事との関連が重要です。健常者にアルコールとブドウ糖を摂取させたときに血糖値が上昇したとの報告もありますが、アルコールを摂取した後に糖負荷検査を行い血糖値が改善したとの報告もあります。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン」では、アルコール摂取に関して「合併症のない例や肝疾患などを有しない血糖コントロールの良い例では必ずしも禁止する必要はないが、スルホニル尿素(SU)剤を内服する例では、低血糖を引き起こす危険があるばかりでなく、アルコールを多飲する例では糖尿病治療に悪影響を及ぼすので、飲酒量を自分で制限できない例では禁止することが望ましい。アルコールの摂取については、1日25g 程度を上限の目安とし、毎日は飲酒させないこととする。 」とされています。
薬剤とアルコールの関係については、インスリンとSU剤は低血糖を起こす可能性がありますので注意が必要です。また、ビグアナイド剤では乳酸アシドーシスを起こすことがあります。その他、α-グルコシダーゼ阻害(α-GI)剤、インスリン抵抗性改善剤、速効型インスリン分泌促進剤などではアルコールとの相互作用は報告されていません。しかし、α-GI剤や速効型インスリン分泌促進剤の服用タイミングは非常に難しく、飲酒前がいいのか、食直前がいいのか、それとも食直後いいのか?非常に悩むところです。これらについては医師、患者と相談してルールを決めておく必要があるように思われます。
「酒は百薬の長」といわれるように適度の飲酒はストレス発散の手段として有用ですが、血糖値のコントロール時期は禁酒としたほうが良いでしょう。コントロールできたところで、医師の許可の下、適量の飲酒を許してもいいのではないかと思われます。

参考:
糖尿病患者の飲酒と高・低血糖 下川 耕太郎ら プラクティス Vol.22 No.2 2005.3.4
各添付文書

Q33.
「メタボリックシンドローム」について教えてください。
A.

 メタボリックシンドローム(代謝異常型症候群)は、シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、内臓脂肪症候群とも呼ばれる複合生活習慣病です。
動脈硬化の危険因子になる生活習慣病(肥満、高血圧、高血糖、高脂血症)を重複して発症していることがあります。肥満や血圧・血糖など個々の検査データはそれほど悪くないのですが、要注意の項目が複数ある場合、心筋梗塞や脳梗塞になり易くなります。日本の企業労働者12万人の調査では、軽症であっても「肥満」、「高血圧」、「高血糖」、「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」、または「高コレステロール血症」の危険因子を1つ持つ人は心臓病の発症リスクが5倍、2つ持つ人は10倍、3~4つ併せ持つ人ではなんと31倍にもなることが分かりました。     
厚生労働省の調査では、高血圧患者数は3,900万人、高脂血症は2,200万人、糖尿病(予備軍を含  め)は1,620万人、肥満症は468万人と言われております。これらの患者は年々増加しています。   
脂肪のたまり方は内臓脂肪型で、増えると、肝臓での代謝異常が起こるほか、内臓脂肪から放出されるアディポサイトカインの分泌が異常になります。この結果、血糖や血圧、低比重リポ蛋白などが正常より高めになることが多いです。
肥満大国といわれるアメリカでは2001年にメタボリックシンドロームの診断基準を発表しました。
これと1999年にWHOが作成した診断基準は、メタボリック・シンドロームのほぼ国際基準となり、日本では今年の4月に、8学会の委員で構成される「メタボリックシンドローム診断基準検討委員会」が、日本内科学会で「日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準」を発表しました(下表)。
原因は、高カロリー・高脂肪食の摂り過ぎと、運動不足に尽きます。日ごろから規則正しい食事と適切なカロリー摂取を心がけ、こまめに体を動かすように心がけていただきたいです。

(表:メタボリックシンドロームの診断基準)

・ウエスト周囲径:男性で85cm以上、女性で90cm以上

 このウエスト周囲径に加えて、次の3項目のうち、2項目以上が当てはまる場合、メタボリックシンドロームと診断します。

  1. 脂 質:中性脂肪 150mg/dl以上かつ/または、HDL-コレステロール40mg/dl未満
  2. 血 圧:収縮期血圧130mmHg 以上かつ/または、拡張期血圧85mmHg 以上
  3. 血糖値:空腹時血糖値110mg/dl以上  

参考:
糖尿病患者の飲酒と高・低血糖 下川 耕太郎ら プラクティス Vol.22 No.2 2005.3.4
各添付文書

Q34.
高血圧症ガイドラインについて教えてください。
A.

 2000年に日本高血圧学会より高血圧治療ガイドライン(Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension;JSH2000)が刊行されていましたが、昨年12月20日に高血圧治療ガイドライン(JSH2004)が刊行されました。
JSH2004はJSH2000と根本的に異なる内容ではなく、4年間に発表された内外のエビデンスを考慮して、より進化させた内容となっています。特に、以下の諸点に留意して改定が行われました。

  1. 日本人特有の心血管病にも重点を置く。心血管イベントリスクに脂質代謝異常(高コレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、肥満(とくに内臓肥満)、尿中微量アルブミンを追加した。
  2. 日本人に適した非薬物療法及び降圧療法を考慮する。
  3. 血圧の日内変動を十分に考慮した治療を心掛け、家庭血圧の日常臨床への応用に配慮する。
    24時間血圧の管理、特に早朝の血圧管理を行う。
  4. 高血圧の治療は長期間にわたることから医療経済的問題にも配慮する。
    初診時の高血圧管理計画は、1-血圧測定、病歴、身体所見、検査所見より、2-二次性高血圧を除外し、3-危険因子、臓器障害、心血管病、合併症を評価します。そして下記の表のとおり、リスク層別化に応じて、治療計画を決定し、生活習慣の修正と必要に応じた降圧薬療法を開始します。
(表)血圧患者の心血管病のリスクとリスク別治療計画

血圧分類

血圧以外のリスク要因

正常高値血圧
130~139/
80~89mmHg
軽症高血圧
140~159/
90~99mmHg
中等高血圧
160~179/
100~109mmHg
重症高血圧
≧180/
≧110mmHg
危険因子なし 低リスク
生活習慣の改善指導→3カ月後に≧140/90なら降圧薬治療
低リスク
生活習慣の改善指導→1カ月後に≧140/90なら降圧薬治療
高リスク
生活習慣の改善指導→直ちに降圧薬治療
糖尿病以外の1~2個の危険因子あり 中等リスク
生活習慣の改善指導→1カ月後に≧140/90なら降圧薬開始
中等リスク
生活習慣の改善指導→1カ月後に≧140/90なら降圧薬開始
高リスク
生活習慣の改善指導→直ちに降圧薬治療
糖尿病、臓器障害、心血管病、3個以上の危険因子、のいずれかがある 高リスク
生活習慣の改善指導→直ちに降圧薬治療
高リスク
生活習慣の改善指導→直ちに降圧薬治療
高リスク
生活習慣の改善指導→直ちに降圧薬治療
生活習慣の改善指導→糖尿病、慢性腎疾患があると適応となる降圧治療
血圧以外の危険因子:喫煙、糖尿病、脂質代謝異常(高コレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、肥満(特に内臓脂肪)、尿中微量アルブミン、高齢(男性60歳以上、女性65歳以上)、若年発症の心血管病の家族歴

 高血圧症は生活習慣病のひとつですから、生活習慣の修正が基本です。1.食塩制限6g/日未満、2.野菜・果物の積極的摂取(重篤な腎障害がある場合や糖尿病患者はこれに当てはまりません。)、 コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える、3.適正体重の維持(BmIで25を超えないこと)、4.運動療法(心血管病のない高血圧患者が対象で、有酸素運動を毎日30分以上を目標に定期的に行うこと)、5.アルコール制限(エタノールで男性は20~30mL/日以下、女性は10~20mL/日以下です)、6.禁煙です。生活習慣の複合的な修正はより効果的です。
臨床で用いられている主要な降圧薬は、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬の6種類です。それぞれ積極的に使用することが望ましい状態と禁忌の状態があります(下表参照)。薬物の選択は、年齢と性別のほか、心血管病の危険因子(高脂血症、肥満、耐糖能異常など)、標的臓器障害・心血管病、降圧薬の副作用・薬価・QOL・性機能への影響を考慮します。

(表)主要降圧薬の積極的な適応と禁忌
降圧薬 積極的な適応 禁  忌
Ca拮抗薬 脳血管疾患後※ 、狭心症、左室肥大※、糖尿病、高齢者 房室ブロック(ジルチアゼム)
ARB 脳血管疾患後、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、腎障害、糖尿病、高齢者 妊婦、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄
ACE阻害薬 脳血管疾患後、心不全、心筋梗塞後、左室肥大、腎障害、糖尿病、高齢者 妊婦、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄
利尿薬 脳血管障害後、心不全、腎不全、(ループ利尿薬)、高齢者 痛風
β遮断薬 狭心症、心筋梗塞後、頻脈、心不全 喘息、房室ブロック、末梢循環障害
α遮断薬 高脂血症、前立腺肥大 起立性低血圧

※:JSH2004において追加または変更された項目

降圧薬の使い方は、
1.単薬(併用合剤が使用可能になれば、それを含む)で低用量から開始する。
2.1日1回服用でよい長時間作用型の降圧薬を使用する。
3.2~3ケ月以内に降圧目標に到達することを目指す。 4.外来での降圧目標140/90mmHg未満(非高齢者で可能なら130/85mmHg未満)に到達しない場合には、増量するか、相加、相乗作用が期待できる他のクラスの降圧薬を併用するか、ほとんど降圧がない場合は他のクラスに変更する。忍容性が許すならば増量するが、通常量の2倍以上にはしない。5.利尿薬の少量投与は他の降圧薬の効果を高める。利尿薬を含まない2薬の併用で降圧が不十分の場合には3薬目に利尿薬を用いることを原則とする。6.24時間にわたる降圧が望ましく、早期高血圧や逆白衣高血圧に対してはより長時間作用の降圧薬やα遮断薬、中枢性交感神経抑制薬の就寝前の使用により対処する。7.治療開始後6ケ月を経過しても降圧目標に到達できない場合には高血圧専門家に紹介する。

(参考資料)高血圧治療ガイドライン2004年版
薬局、Vol.56,No.6(2005)
医薬ジャーナル、Vol.41,No.5 (2005)

Q35.
コエンザイムQ10(CoQ10)は、どんな症状にも効くのでしょうか?
A.

 CoQ10はユビキノンとよばれる脂溶性のビタミン様物質で、自然界に存在する一群の化合物の仲間であり、体内でも合成されます。
医薬品ではノイキノン®等として用いられていますが、効能・効果は「基礎治療施行中の軽度及び中等度のうっ血性心不全症状」です。作用は、1)虚血心筋での酸素利用効率の改善、2)心筋でのATP産生の賦活、3)低下した心機能の改善、4)抗アルドステロン作用で、虚血性心疾患、高血圧やリウマチ性心疾患等に基づくうっ血性心不全の自覚症状(浮腫、肺うっ血、肝腫脹や狭心症状等)に対して有効性が認められています。
一方、健康食品のCoQ10は、俗に「活性酸素の増加を抑制する」などといわれ、心臓および心血管系の保護、糖尿病、繊維筋痛症、片頭痛、脳および神経系の機能、さらに癌に対する役割があるといわれています。(独)国立健康・栄養研究所では「健康食品」のデータベースを作成し、インターネット上に公開しています。それによるとCoQ10は、うっ血性心不全、高血圧、ミトコンドリア遺伝子異常糖尿病、ミトコンドリア脳筋症、筋ジストロフィー、パーキンソン病、片頭痛の予防、HIV/AIDSの免疫機能の向上、CoQ10欠乏症では、単剤もしくは治療薬との併用で有効性が示唆されています。しかし糖尿病については、基礎実験では「糖質をエネルギーに変えて血液中の糖分を減らす」といわれていますが、糖尿病患者の血糖値のコントロールには効果がないことが示唆されています。また運動能力の向上には恐らく効果がないといわれています。
安全性については、おそらく問題はないと思われます。ノイキノン®での短期間の過量投与では特に気になる症状はなく、通常用量と相違ありませんでした(長期試験は行っていません)。
牧野らが行ったCoQ10含有健康食品における成分含量と溶解性についての調査では、CoQ10含有製品のラベルに記載されている1日あたりの目安摂取量は、個々の製品によって大きな差があり、10mg~270mg(ノイキノン®は30mg)と27倍もあった。また剤形が多岐にわたっており、主に錠剤からの成分の溶解性が著しく異なる可能性が推測されています。
医薬品は品質が管理されていますが、健康食品は製造会社の自社規格にとどまっており、薬剤師としてチェックが必要と思われます。また効能についてもデータの蓄積と検討が必要と思われます。

(参考資料)

  • (独)国立健康・栄養研究所「健康食品」データベース(http://hfnet.nih.go.jp/)
  • 牧野ら,コエンザイムQ10含有健康食品における成分含量と溶解性,医療薬学 Vol.31,No.7(2005)
  • ノイキノン®添付文書,エーザイ株式会社(1999)
Q36.
インフルエンザワクチンQ&A(国立感染症研究所 感染症情報センターインフルエンザQ&A改編)
Q.授乳中や妊娠中にインフルエンザワクチンを接種しても問題はありませんか?
A. 授乳婦は接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、ウイルスが体内で増えることも無く、母乳を介してお子さんに影響を与えることもありません。
また妊婦は胎児に影響を与えるとは考えられていないため接種不適当者には含まれていません。
しかし妊婦又は妊娠している可能性の高い女性に対して、インフルエンザワクチン接種の国内での調査成績がまだ集積されていません。したがって現段階ではワクチン接種によって得られる利益が、不明の危険性を上回るという認識が得られた場合にワクチンを接種するとされています。一般的に妊娠初期は自然流産が起こりやすい時期であり、この時期の予防接種は避けた方がよいと考えられます。
Q.インフルエンザワクチンに神経疾患の原因となる水銀(チメロサール)が含まれているというのは本当ですか?
A.  インフルエンザワクチンをはじめとした不活化ワクチンには、1930年頃よりチメロサールという防腐剤が、容器内の細菌などによる汚染を防ぐ目的で含まれています。チメロサールは約49%のエチル水銀を含んでいますが、健康被害が報告されているメチル水銀とは異なり、神経組織を始めとした臓器親和性は低く、その半減期も短くて、1週間未満(メチル水銀は半減期約1カ月半)とされています。現在のところ、実際的な健康被害の報告も、局所の発赤や軽度腫脹、発疹などが主体であり、重大な健康被害を生じるといった研究報告もありませんが、水銀剤であるということから理論上のリスクに対する問題点が議論されています。
Q.卵やゼラチンにアレルギーのある人にインフルエンザの予防接種はできるでしょうか?
A. 卵アレルギーの程度にもよりますが、ほとんどの場合問題なく接種できます。近年は高度に精製され、鶏卵由来のタンパク成分の量は極めて微量であり、通常は卵アレルギーがあってもほとんど問題となりません。しかしながら、鶏卵を食べてひどい蕁麻疹や発疹を生じたり、口腔内がしびれたりする方や、卵成分でアナフィラキシーショックを起こしたことがあるような、重篤な卵アレルギーがある方は、ワクチン接種を避けるか、インフルエンザの罹患リスクとワクチン接種に伴う副反応リスクとを考慮して、接種前にかかりつけの医師とよく相談のうえ、接種ワクチン液による皮内反応を事前に実施するなど、十分に注意して接種することを勧めます。
また、ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンに対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が報告されていましたが、現在、インフルエンザワクチンを生産している国内4社からの製品にはいずれも、ゼラチンは含まれていません。
〈インフルエンザ情報ホームページ〉
Q37.
簡易懸濁法について教えてください。
A.

 簡易懸濁法とは、昭和大学藤が丘リハビリテーション病院薬局長の倉田なおみ先生が従来の粉砕法に代わる調剤方法として提唱された方法です。「錠剤をつぶしたりカプセルを開封したりしないで、そのまま温湯に崩壊・懸濁させて経管投与する方法。水温約55℃、崩壊時間は10分以内。」を提唱されています。
この簡易懸濁法を提唱したきっかけは、「パナルジン細粒を胃ろうから投薬したところ、詰まってしまって、…どうしよう!」という看護師さんの1本の電話でした。このときは消化酵素剤を酸性のシロップに溶かし注入することで再開通したのですが、このパナルジン細粒は「パナルジン錠つぶし」の処方に対し、薬剤師が医師に確認したうえで振り替えた薬品だったため、振り替えた薬がチューブを閉塞させた事実に大きなショックを受け、どの薬品がチューブを閉塞させるのか、どの太さなら通過するのかを調べたことから考えつかれた方法です。
従来の錠剤の粉砕またはカプセル剤の開封の問題点は、1-光・温度・湿度に対する安定性、2-腸溶性及び徐放性の破壊、3-吸収・バイオアビリティの変化、4-味・臭い、5-刺激感・しびれ感・収斂性、6-粉砕・分割包装によるロス、7-混和・混合による配合変化、8-接触・吸入による健康被害、9-調剤業務の煩雑化、10-調剤時間の増大などがあげられます。中には、薬品が疎水性で水にうまく懸濁しないため、注入シリンジやディスペンサーで吸い取れなかったり、嵩を増すために賦形した乳糖や澱粉は難溶性のため、何度も水で洗い流す必要があり、投薬のために多量の水が必要となったりすることがありました。
簡易懸濁法のメリットは、1-粉砕しないため安定性、体内動態への影響がない、2-調剤時・投薬時の薬品のロス・投与量の減少がない、3-調剤時間は粉砕法の2割程度に短縮でき、チューブ閉塞を回避できるため細いチューブを使用することで患者QOLの向上が図られる、4-投与可能薬品が粉砕法より多く、投与直前に錠剤コードを確認できることからリスクが回避できる、5-中止・変更の対応が容易であると同時に経時的ロスを減らすことができるなど、多くあります。
調剤方法は、「経管投与可能薬品一覧表」を参照し、そのまま温湯に入れれば崩壊する薬剤・カプセル剤と、コーティングを破壊する薬剤とに分けてそれぞれ1回量包装とします。コーティング崩壊する錠剤は1回量に包装した分包紙から乳棒で数回叩き、錠剤を破壊します。そして投与時に、カップに入れた約55℃の温湯20mLの中に1回分の薬を入れてかき混ぜ、10分間自然放置します。ほとんどの薬剤が崩壊して懸濁しているので、その懸濁液をディスペンサーに吸い取り経管投与します。チューブを適量の水で洗い流します。(詳しくは、参考文献を参照して下さい。)

(参考文献)藤島一郎・監,倉田なおみ・著:内服薬 経管投与ハンドブック

Q38.
ミャンマーに行きます。ポリオ、A型肝炎、腸チフス、マラリアのワクチンの接種はどうしたら良いでしょうか?
A.

 A型肝炎とポリオのワクチンは、予約が必要かもしれませんが、たいていの医療機関(病院、診療所)で用意することができます。マラリアに関しては、いくつか予防薬があります。
塩酸メフロキン(商品名:メファキン「ヒサミツ」錠 275)が、日本では認可されていますので購入が可能です。ただし用意するまでに数日かかることが多いようです。腸チフスのワクチンは日本では認可されていませんが、注射と内服の2種類があり、日本では2つの医療機関(下記参照)で接種することができます。
その他、ミャンマーに入国する際に必要なワクチンとして、黄熱病流行国から入国する際には、入国時に黄熱の予防接種が要求されます。また一般に破傷風、日本脳炎、狂犬病などの予防接種が勧められます。
なお、海外旅行や海外勤務などで海外に出かける方が多くなっており、場所によっては予防接種が必要となることがあります。そのような場合の検索方法としては、検疫所に電話すると詳しく聞けますが、それ以外にも、検疫所ホームページの「海外渡航者のための感染症情報」(FORTH)や各国の日本大使館ホームページの医療情報にアクセスすることで情報が得られます。

(参考)塩酸メフロキンの用法用量は、治療用と予防用(保険適応外)があり、通常成人では3/4~1錠を、マラリア流行地域到着1週間前より開始し、1週間隔(同じ曜日)で経口投与します。流行地域を離れた後も4週間は経口投与します。

(腸チフスの予防接種可能な医療機関)
・東京インターナショナルクリニック(TEL:03-3582-2646)
・海外勤務者健康管理センター(TEL:045-474-6043)
※接種を希望される方は、行かれる前に必ず確認してください。

Q39.
定期的に肝機能検査が必要な医薬品の検査時期について教えてください。
A.

 下記に添付文書に検査時期が記載されている主な薬品について示します。参考にしてください。これら以外にも重大な副作用に肝機能障害などの記載がある薬品もありますし、薬剤のほとんどが肝臓及び腎臓で代謝されますので、薬剤を使用している間は、定期的な検査が必要と思います。

商 品 名 検 査 の 実 施 時 期 重大な副作用の添付文書記載
アスペノンカプセル 投与初期においては2週間に1回 肝機能障害、黄疸
ティーエスワンカプセル 各クール開始前及び投与期間中は2週間に1回以上、特に1クール目及び増量時には頻回に 劇症肝炎等の重篤な肝障害
パナルジン錠 投与開始後2ケ月間は原則として2週に1回 著しいGOT、GPTの上昇、黄疸等の所見を伴う肝障害
ブロニカ錠 1ケ月に1回 黄疸、GOT、GPTの上昇を伴う重篤な肝機能障害、劇症肝炎
メタルカプターゼカプセル 投与開始後2ケ月は1~2週に1回、その後は2~4週間に1回の割合 胆汁うっ滞性肝炎
ユーエフティ、ユーエフティE顆粒 投与開始から2ケ月間は1ケ月に1回以上 劇症肝炎等の重篤な肝障害、肝硬変
ユリノーム錠 投与開始後少なくとも6ケ月間は必ず定期的に 劇症肝炎等の重篤な肝障害、黄疸
リピトール錠 投与中は投与開始又は増量時から12週までの間に1回以上、それ以降は定期的(半年に1回等) 肝機能障害、黄疸
メタルカプターゼ 投与開始後最初の2ヶ月は1~2週間に1回、その後は2~4週間に1回の割合 ネフローゼ症候群
ユーエフティ 定期的(特に投与開始から2ヶ月間は1ヶ月に1回以上)に 急性腎不全、ネフローゼ症候群
リマチル錠 毎月1回血液及び尿検査等の臨床検査 急性腎不全、ネフローゼ症候群
アザルフィジンEN 投与開始後最初の3ヶ月間は2週間に1回、次の3ヶ月間は4週間に1回、その後は3ヶ月ごとに1回 急性腎不全、ネフローゼ症候群、間質性腎炎
リウマトレックス 4週間ごとに臨床検査を行なう 重篤な腎障害
5-FU 定期的(特に投与初期は頻回)に 急性腎不全
モーバー 定期的に臨床検査を行なう ネフローゼ症候群
バクタ 頻回に臨床検査を行なう 腎障害
プログラフ 頻回に臨床検査を行なう 急性腎不全、ネフローゼ症候群
ロイコン 定期的に腎機能検査を行なう 急性腎不全
フルツロン 定期的に臨床検査を行なう 急性腎不全
オメプラール 定期的に行なうことが望ましい 間質性腎炎、急性腎不全

参考文献:松元美香,etl.,医療用医薬品添付文書の肝・腎機能検査の記載方法に関する問題点とその改善,医療薬学,Vol.28.No.5,450-455(2004)

Q40.
低カリウム(K)血症をきたす原因には、どのようなものがありますか?
A.

 Kは主として細胞内液に多く存在します。細胞内のKは総量で約 3000mEq もあり、それに対し細胞外のKは 60mEq しかありません。血清中Kは神経や筋の興奮性に関与し、とくに心筋に大きな影響を及ぼしています。このためKの異常はときとして致死的不整脈など生命の維持に危険をもたらすことがあります。K代謝を調節しているのは、この細胞内外の分布と腎からの排泄であり、前者は主としてインスリン、後者はアルドステロンが関与しています。したがってこの2因子の異常は当然K値の異常をもたらしますが、その他多くの因子によってもK代謝の異常がもたらされます。低K血症は腎からのK喪失や細胞内へのK移動によって起こり、まれではありますがK摂取の不足も低K血症をきたらします。一方高K血症は体内K量の増大や細胞内よりのK移送の増大によって起こります。

 下記に検査値がK低値の病気と添付文書の副作用の項目に低K血症がある薬剤について記載します。

検査値がK低値の病気
アルドステロン症(原発性、続発性)、11-β-hydroxylase 欠損症、レニン産生腫瘍、リドル症候群、利尿剤(サイアザイド系、ループ利尿薬)、アルカローシス、尿細管アシドーシス、Bartter症候群、嘔吐、下痢、胃液吸引、低K血症周期性四肢麻痺

添付文書の副作用の項目に低K血症がある薬剤
S・m散、アミノレバンEN、アルビナ坐剤、イトリゾールカプセル、カリメート、ケイキサレート、ジスロマック錠、ジフルカンカプセル、ダイアート錠、テオドール、ナトリックス、ネオファーゲンC錠、プルゼニド錠、プログラフカプセル、ユニフィル錠、ラシックス錠、ルプラック錠

参考文献:スキルアップのための臨床検査サブノート 南山堂
各添付文書

Q41.
薬によって尿の色が変わるものを教えて下さい。
A.

 薬やその代謝物によって、尿の色が変わることがあります。ビタミン剤やドリンク剤などを飲んで経験される方も多いのではないでしょうか。このように、尿は薬の影響で着色することがありますが、水分の摂り方や汗のかき方によって濃くなったり薄くなったりしますし、飲食物によっても変化します。さらに、体調や病気によっても変化することがあります。
まれに重大な副作用の急性腎不全やネフローゼ症候群の初期症状として尿の色が変わることもありますので、そのような薬剤の場合には、「色が変わったらすぐに連絡するように」と指導が必要と思います。
下記に副作用でなく尿の色調を変えることのある薬の例を挙げます。

(表)副作用でなく尿の色調を変えることのある薬の例

薬  効 成  分 色  調
抗トリコモナス薬 メトロニダゾール 暗赤色
血圧降下薬 メチルドパ 黒 色(放置すると)
鎮咳去淡薬 ヒベンズ酸チペピジン 赤 色
下 剤 センナ、センノシド 黄褐色~赤色
抗生物質 セフジニル 赤 色
潰瘍性大腸炎治療薬 サラゾスルファピリジン 黄赤色(尿がアルカリのとき)
鎮けい薬 臭化チメピジウム 赤 色
糖尿病性末梢神経障害用薬 エパルレスタット 黄褐色~赤色
抗結核・抗ハンセン病薬 リファンピシン 橙赤色
抗パーキンソン薬 レボドパ 黒 色
ビタミンB2 リボフラビン 黄 色
抗アンドロゲン薬 フルタミド 琥珀色または黄緑色

(参考文献)各医薬品添付文書
Q42.
眼瞼痙攣治療薬の「ボトックス®」について教えてください。
A.

 眼輪筋の痙攣によって起こり開瞼が自由にできない状態(突然強いまばたきが起きたり、目を閉じようと思わないのに突然、勝手に瞼が閉じてしまう)をいいます。発症は下眼瞼部のピクピク感から始まり、次第に上部瞼部に進行し、究極的には眼瞼障害を来たして機能的な失明状態になります。原因により1-症候性、2-顔面神経性、3-精神性、4-習慣性に分類されますが、詳しい発症原因が未だに解明されていないため、根治療法は不可能であり、対症療法が中心となっています。
わが国では約5千人の患者がいると推定されていて、発症年齢は40~70歳の中高年の女性に多いという特徴があります。頻回に発症する場合、以前は手術するしか方法がなかったのですが、1977年にボツリヌスA型毒素(BAT)療法が行われるようになりました。ボトックス®はアメリカで1989年に薬として開発され、日本においては1996年に眼瞼痙攣に対して承認され、その後、片側顔面痙攣や痙性斜頚にも保険が適用され使用されるようになりました。
この薬が筋肉を弛緩させる仕組みは、神経終末でアセチルコリンの放出を阻害することによって、筋肉を緩めるとされています。
眼瞼痙攣の治療は、1眼あたり眼輪筋6部位の筋肉内に注射します。注射の効果は3~4ヶ月持続しますが、症状再発の場合には再投与します。しかし2ヶ月以内の再投与は避けることとなっています。期間をあけるのは体内に毒素に対する抗体ができて効果がなくなるのを防ぐためです。ボトックス®は毒薬に指定され、治療に当たる医師は注射の手技に関する十分な知識と経験が必要とされ、治療法の講習を受けてから使用が許可されます。神経内科、ペインクリニック、眼科、脳神経外科などの医師が登録医となっています。
Jankovic分類を基準とした全般改善度の「改善」以上の割合は、1.25単位/部位72.7%、2.5単位/部位90.0%でした。副作用は、眼瞼下垂、閉瞼不全、流涙、兎眼、注射部腫脹、倦怠感、眼の乾燥感等でした。

参考資料:
・ボトックス注100 製品情報概要
・梶 龍兒、ボツリヌスA型毒素療法、今日の治療指針 2002、p.539

Q43.
過活動膀胱について教えてください。
A.

 (疾患の概念)過活動膀胱とは、尿意切迫感・頻尿・切迫性尿失禁で構成される症状症候群を呈する病的状態です。症状症候群の構成では、尿意切迫感が必須(週1回以上)で、通常は頻尿と夜間頻尿(8回以上)を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあります。ただし、同様な症状をきたす他の明らかな疾患(下部尿路の炎症・感染、下部尿路の新生物、尿路結石、腹圧性尿失禁、多尿など)は除外します。
(病態・病因)過活動膀胱の病態は排尿筋の不随意な収縮、すなわち排尿筋の過活動です。しかし、排尿筋過活動の病因は様々で、神経因性と非神経因性の過活動膀胱に大別されます。神経因性過活動膀胱とは下部尿路の支配神経に障害がある時にみられる過活動膀胱で、1)脳幹部橋排尿中枢より上位の脳障害、2)仙髄より上位の核上型脊髄障害、の2つが代表的な原因疾患です。これらは神経因性膀胱の一種とも言えます。非神経因性過活動膀胱とは臨床的に明らかな神経障害がない場合の過活動膀胱で、従来は不安定膀胱といわれたものに類似します。 非神経因性過活動膀胱の原因としては、前立腺肥大症のような下部尿路閉塞疾患、加齢、骨盤底筋障害などがありますが、大部分は病因が特定できません(特発性過活動膀胱)。
(疫学)過活動膀胱の頻度は、全国の40歳以上の一般住民を対象とした調査によると12.4%で、その実数は約810万人と推定されます。加齢と高い相関を有し、70歳以上では30%以上に達します。 また、過活動膀胱は患者の生活の質(Quality of Life:QOL)を低下させます。以上のことから、過活動膀胱は極めて一般的な疾患で、重要な健康問題とされてます。
(治療)主な治療は抗コリン剤で、かなりの割合で効果があります。昨年8月に発行された日本排尿機能学会による過活動膀胱診療治療ガイドラインでは、デトルシトールRとベシケアRは、推奨グレード「A」にランクされています。これらの薬剤は、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁に対して開発されたムスカリン受容体拮抗薬であり、唾液腺に比較して膀胱選択性が高いことが確認されています。

(参考)
日本排尿機能学会 過活動膀胱ガイドライン作成委員会編:過活動膀胱診療ガイドライン第1版(2005年 8月)
厚生労働省:過活動膀胱治療薬の臨床評価方法に関するガイドライン(2006年 6月)

Q44.
肥満症治療ガイドラインについて教えて下さい。
A.

 2006年1月に、日本肥満学会から「肥満症治療ガイドライン2006」が、発行されました。今回のガイドラインが目指すものは、1-肥満症の治療目的は体重減少にあり、この減量によって疾病の発症を防止、あるいは病態を改善、ないしは再発を予防できる治療を対象にする。2-内臓脂肪蓄積は糖代謝異常や動脈硬化性疾患を頻発する。このような病態は、メタボリックシンドロームの根幹にもなっている。このことを治療対象にするのではなく、予防医学的見地からも内臓脂肪を標的にした治療に重点をおく。3-食事療法、運動療法、薬物療法、行動療法などでは、それぞれの方法、適応、成果などを盛り込み、学会としての統一見解を示す。成果の評価では臨床検査値や自覚症状の改善度を明示する。4-薬物療法ほど簡易で効率的な治療法はない。その反面、一歩誤れば体重リバウンドを誘発する元凶にもなるし、乱用の危険もある。肥満症治療薬の長所を最大限に引き出すと同時に、短所を最小限にとどめるため、薬物療法の1)適応症例、2)使用基準、3)投与期間、4)治療成果を盛り込んだ評価法を明示する。とあります。
薬物療法のポイントとしては、1-治療コンセプト:薬物療法が適応になる症例でも、原則として食事療法や運動療法は継続して行う。2-治療対象:健康障害を改善するために確実で火急な減量効果を必要とし、しかも食事や運動療法だけではその目的を達成するだけの減量効果が得られない肥満患者。3-適応基準:上記の治療対象に該当する肥満症は以下の2群に分類する。1)BmI≧25の症例で、かつ内臓脂肪面積≧100cm2が確定され、「脂肪細胞の質的異常に起因する肥満症(耐糖能異常/2型糖尿病、脂質代謝異常、高血圧、高尿酸血症・痛風、脂肪肝、冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症、脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作)」のうち二つ以上保有する肥満症(メタボリックシンドロームと共通する病態)。2)BmI≧30以上の症例で、かつ「脂肪細胞の量的異常に起因する肥満症(骨・関節疾患:変形性関節症・腰椎症、睡眠時無呼吸症候群・Pickwick症候群、月経異常)」を保有する肥満症。(注:マジンドールの添付文書の適応には「肥満度が+70%以上又はBmI≧35」とあります。)4-投与期間の目安:使用する治療薬の薬効、減量達成までの期間などを考慮して決める。ただし、投与期間が規定されている治療薬はそれに従う。5-治療成果の目安:減量の達成幅は、1)脂肪細胞の質的異常による肥満症:≦5kg/1~3ヶ月、2)脂肪細胞の量的異常による肥満症:≧5~10kg/1~3ヶ月。その指標には肥満に伴う疾患(群)の症状ないしは臨床検査値の改善を用いる。できれば内臓脂肪面積を測定し100cm2以下を目標にする。6-単に外見を気にした「やせ願望」者は治療対象から除外する。となっています。
当然、食事療法・運動療法は重要ですが、筆者は「グラフ化体重日記」と「長期的、持続的な減量」をお勧めします。肥満患者は体重を測定しないことが多く、中には意識的に拒否している患者もおられます。その意味では体重を毎日測定し、肥満という現実に直面することは、行動療法の第一歩だと思います。実は筆者はこれで17kg/17ヶ月、減量に成功しました。1ヶ月1~3kg程度の小目標から始めましょう。

参考文献:
肥満症治療ガイドライン2006 肥満研究2006.12
特集 肥満症治療ガイドライン2006 臨床栄養 Vol.108 No.5 2006.5
サノレックスR錠0.5mg 添付文書

Q45.
薬剤性味覚障害が起こり易い薬剤について教えてください。
A.

 薬剤性味覚障害は、味覚障害の原因として最も頻度が高いと報告されています。味覚障害を惹起しうる薬剤は、抗ガン剤、抗生剤、利尿剤を中心に約150種類あるといわれています(表1)。薬剤性味覚障害の発現機序は、薬剤が亜鉛とキレートを形成し亜鉛の排泄を促進して、二次的亜鉛不足の状態が生じることによると考えられています。その他、薬剤が味蕾を直接障害したり、味覚神経伝導路や味覚中枢の情報処理機能を障害することが原因として考えられますが、多くの薬剤において味覚障害の発生機序は不明です。また唾液は食物等から味覚成分を溶かし出す役目を果たしており、薬剤の副作用で唾液の分泌量が減少すると味を感じにくくなったり、唾液不足による舌炎のため味蕾がダメージを受けることも考えられます。
薬剤性味覚障害の治療は、第一に原因となる薬剤の減量あるいは中止ですが、原疾患の治療上、投薬の継続が必要な場合、亜鉛製剤の内服が試みられています。なお、特に食事制限がされていない患者では、亜鉛含有量の多い食品(表2)の摂取が予防的に働く可能性が考えられています。発症後6ヶ月以内の治療で70%以上の有効率が得られますが、6ヶ月以上放置すると有効率が低下することが報告されています。

(表1)味覚障害を起こしやすい薬剤一覧(一部)
薬剤分類 薬 剤 名 薬剤分類 薬 剤 名
利尿剤 フロセミド、スピロノラクトン 抗生剤 テトラサイクリン、塩酸リンコマイシン
抗甲状腺薬 チアマゾール 抗ガン剤 フルオロウラシル
降圧剤 カプトプリル、メチルドパ 肝疾患治療薬 チオプロニン、グルタチオン
鎮吐剤 メトロクロプミド 抗リウマチ薬 ペニシラミン
抗パーキンソン病薬 レボドパ 糖尿病薬 ビグアナイド系薬剤
抗結核薬 塩酸エタンブトール、イソニアジド、パラアミノサリチル酸カルシウム

(表2)亜鉛含有量の多い食品
牡蛎、小麦胚芽、スモークレバー、パルメザンチーズ、煮干、胡麻、豚肝臓、畳鰯、凍り豆腐、するめ

(参考文献)
・ENIF 医薬ニュース Vol.15 No.4 2006
・後藤仲之 他:薬剤による味覚障害.薬局,56(1):61-65,2005.
・科学技術庁資源調査会編「五訂日本食品標準成分表」

Q46.
抗生剤と共に耐性乳酸菌製剤がよく処方されますが、全ての抗生剤に有効なのでしょうか?
A.

 抗生物質による腸内細菌叢の変化は、下痢や軟便等の副作用を引き起こすことがあります。そのため耐性乳酸菌製剤はこのような副作用の予防あるいは治療のために使用されています。        しかし耐性乳酸菌製剤「エンテロノン®-R」「ビオフェルミン®-R」の効能又は効果に「下記抗生物質(ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ナリジクス酸)、化学療法剤投与時の腸内細菌叢の異常による諸症状の改善」とあり、ニューキノロン剤やバンコマイシンなどは、記載がありません。
乳酸菌製剤と抗菌剤の感受性を検討した文献はいくつかあります。その中の一つを示します(表1)。ニューキノロン剤やバンコマイシン等に対しては、耐性を示されていません。したがってこれらの薬剤に対して、耐性乳酸菌製剤の使用には効果が期待できないものと考え、下痢等の副作用発現時には抗生物質の投与中止が望ましいと考えられます。

表1:乳酸菌製剤の抗菌剤に対する感受性(文献1より)
  エR ビR ビr
アンピシリン >32 >32 8
ピペラシリン >128 >128 128
セファクロル >32 >32 >32
セフォチアム >32 >32 >32
イミペネム >16 >16 >16
エリスロマイシン >8 8 >8
ミノサイクリン ≦0.5 ≦0.5 16
ホスホマイシン 4 4 32
バンコマイシン ≦1 ≦1 ≦1
エノキサシン ≦2 ≦2 >16
トスフロキサシン ≦0.5 1 2
スパルフロキサシン 1 0.5 0.5
フレロキサシン 2 2 2

単位:µg/mL

(注)エンテロノンR由来は1株(エRと略す)、ビオフェルミンR由来は2株(ビR、ビrと略す)

参考文献:薬理と臨床 5(11):1995~1998,1995
病院薬学 Vol.19, No.4:295~302,1993
各添付文書

Q47.
亜鉛の働きについて教えてください。
A.

 亜鉛含有量の多い食品の摂取が「薬剤性味覚障害」に対して予防的に働く可能性があると10月の「Q&A」で紹介しました。その他の働きについても紹介いたします。
亜鉛には、1.細胞の増殖(DNA合成)やたんぱく質の合成に関与し、細胞の新生・成長を促す 2.新陳代謝を活発にし、傷の回復を促す 3.味覚を正常に保つ 4.免疫機能を維持する 5.鉛や水銀などの毒性を弱め、環境汚染から体を守る 6.生殖機能を維持する(男性の場合、前立腺に多く存在し、精子の形成に関係しています) 7.インスリンの構成成分などの働きがあります。
不足すると、1.髪が抜けやすく、パサついたりする。 2.爪に白い斑点ができる 3.肌が荒れる 4.味覚が低下する 5.風邪を引きやすく、治りにくい 6.大気汚染に弱くなる7.男性では性能力が低下し、女性では不妊、流産しやすくなる 8.動脈硬化が進行する などがおきます。不足の原因としては、1.食事に偏りがある(食品添加物としてポリリン酸やフィチン酸などは、亜鉛の吸収を阻害します〈表〉)2.ストレスが多い 3.お酒を多く飲む 4.高齢者 5.土壌のミネラル不足 6.医薬品による影響 7.激しい運動で多量に汗をかく などがあります。
一日の推奨量は(18~69才)は、男性が9~12mg、女性が7~10mg、とされ、上限量は男女ともに30mgとされています。亜鉛と銅の吸収は拮抗関係にあり、亜鉛の過剰摂取が、銅の不足を招くことがあります。また逆も有り得るので、特定のミネラルを極端に摂ることはさけ、摂取目安量を守ってバランスよく摂取するようにしましょう。
不足した亜鉛をサプリメントで補う方法もありますが、含有量は商品によって大きく異なります。一緒に配合されている成分も異なりますので、商品を選ぶ際は、服用中の薬剤、目的、体調、食習慣なども確認しましょう。

〈表〉亜鉛の吸収を妨げる食品添加物
・ポリリン酸ナトリウム ハム、、チーズ、清涼飲料水、味噌、煮豆、佃煮、大豆、もやし、こんにゃく、ワイン、イカの製品、豆腐など
・フィチン酸 醤油、味噌、たくあん漬け、らっきょう漬け、白菜漬け、べったら漬け、あさり佃煮、かに缶、パン、輸入たけのこなど

(参考文献)
河野 友美 著、コツと化学の調理事典(第3版)
JS Garrow ら 編、ヒューマン・ニュートリション(第10版)
堀美智子 監修・編集、医薬品・食品 相互作用ハンドブック、2006

Q48.
貧血について教えてください。
A.

 貧血とは血液が薄いことであり、検査項目にはヘモクロビン(Hb)濃度、赤血球数(RBC)、ヘマトクリット(Ht)などがあり、基準値より低下している状態を指します。貧血の原因は様々ですが、最も多いのは鉄欠乏性貧血であり、その次は他の疾患に続発する二次性貧血が多いです。
鉄欠乏性貧血は、食事から吸収される鉄の量よりも体外へ失われる鉄の量の方が多いために、体内の鉄が枯渇して生じる貧血です。1日の食事には約 10mg の鉄が含まれており、その内の約 1mg が小腸から吸収され、そして便などとともに約 1mg が失われます。このようにして均衡を保っています。
しかし極端な偏食や胃切除後などでは、鉄の吸収が少なくなって鉄欠乏になります。また月経過多、痔出血、消化性潰瘍や消化器がんなどからの出血が持続すると、食事からの鉄の吸収では追いつかなくなって鉄欠乏になります。思春期の急速な発育時、妊婦や授乳に際しても鉄の需要が増えるため鉄欠乏になりやすいです。
鉄欠乏性貧血の治療は、鉄剤投与ですが、原則として経口薬を用います。通常、経口投与の場合、1日 100mg くらいを投与します。出血が持続しているような場合でなければ、1日 50mg でも治療に反応して貧血は改善されます。
副作用として、便が黒くなる、悪心、便秘、下痢などがあります。消化器症状が続く場合には、「食直後または就寝まえの服用」を提案してみましょう。
相互作用としては、制酸剤(胃内の pH の上昇により、不溶性の塩が形成され、鉄剤の吸収を阻害することがあります)、タンニン酸を含有する医薬品・飲食物(不溶性の塩が形成され、鉄剤の吸収を阻害することがあります)、牛乳・乳製品(牛乳による胃内の pHの上昇および牛乳中の成分と鉄の結合により、鉄剤の吸収を阻害することがあります)などがありますが、貧血の人では、鉄を吸収する力が高まっているため、影響は少ないと考えられています。あまり神経質にならず、薬をきちんと飲むように説明しましょう。

参考文献
浦部 晶夫:貧血. 薬局, 57(増刊号):657-663, 2006.
大井 一弥:造血薬. 薬局, 57(増刊号):1232-1241, 2006.
堀 美智子 監修・編集, 医薬品・食品 相互作用ハンドブック, 2006

Q49.
カルシウム拮抗薬とパーキンソン症候群について教えてください。
A.

 パーキンソン病は多くは中高年で発症し、進行性の運動障害を示す疾患です。症状は筋強剛(筋肉が硬くなる)、振戦(ふるえ)、無動(動作緩慢)、姿勢反射障害(バランスが悪くなる)が主な症状であり、4大症状と呼ばれています。パーキンソン病以外でもパーキンソン病と類似の症状が発現する疾患群をパーキンソン症候群(パーキンソニズム)と呼びます。4大症状のうち、2つ以上見られれば、パーキンソン症状があると考えます。パーキンソニズムには、薬剤性パーキンソニズム、脳血管障害、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症などがあります。
薬剤性パーキンソニズムは、抗精神病薬の副作用として以前より良く知られていました。これはD2受容体の遮断によります。他にもD2遮断作用を持つ薬物には、制吐・消化管運動促進作用を持つメトクロプラミド、ドンペリドンなど日常診療の中でよく使われるものがあり、薬剤性パーキンソニズムをきたすことが知られています。症状はパーキンソン病と区別が難しく、しばしば高齢者でみられます。
一方、カルシウム拮抗薬は、高血圧、虚血性心疾患、不整脈、脳循環改善、片頭痛予防などに繁用される薬剤です。その主な副作用としては、動悸、頭痛、ほてり感、浮腫、歯肉増生などがありますが、その他に、振戦が認められたり、パーキンソンニズムを誘発したりすることが知られています。
添付文書には、ジルチアゼムではパーキンソニズム、マニジピンではパーキンソニズムの増悪又は顕性化、ニルバジピンとアムロジピンでは振戦、シルニジピンとフェロジピンでは手指振戦が挙げられています。その他にも海外での報告ですが、ニフェジピンで振戦や不随意運動、ベラパミルでパーキンソニズムの誘発、アムロジピンでパーキンソニズムが報告されています。
このようにいくつかのカルシウム拮抗薬は、パーキンソニズムや不随意運動などの中枢神経副作用を生じる可能性を有しています。高血圧や虚血性心疾患等、多くの疾患で使用される薬剤なので、高齢者に投与する際には副作用に十分留意する必要があります。

参考文献
・薬剤性パーキンソニズムとパーキンソン病 森 秀生ら 医薬ジャーナル Vol.40,No.1,p69 2004
・パーキンソン病・パーキンソン症候群 根来 清 薬局 Vol.57,増刊号,p. 301 2006
・Langston JW,et al:chronic parkinsonism in humans due to a product of meperidin-analog synthesis. Science219: 979-989, 1983.
・No authors: parkinsonian syndrome and calcium channel blockers. Prescrire Int 12:62,2003.
・各添付文書

Q50.
過活動膀胱および頻尿・尿失禁について教えてください。
A.

 国際禁制学会の2002年用語基準によると、過活動膀胱(OAB)とは「尿意切迫感を必須とし、通常は頻尿と夜間頻尿を伴う症状症候群で、切迫性尿失禁は伴っても伴わなくても良い」と定義されています。尿意切迫感とは、「急に起こる、抑えられないような強い尿意で、我慢することが困難な病的な膀胱知覚」で、正常者が多量に膀胱に貯まったと感じる尿意とは区別されます。(昼間)頻尿とは、「日中の排尿回数が多すぎるという愁訴」と定義され、特に排尿回数が何回以上という基準はありません(便宜的に頻尿を回数(例えば8回以上)で定めることもあります)。夜間頻尿とは、「夜間に排尿のため1回以上起きなければならないという愁訴」と定義され、1回でも排尿のためによる起きなければいけないことが苦痛であれば、「夜間排尿」となります(逆に何回起きても(たとえ5回でも)、本人が困っていなければ夜間排尿とはいえません)。切迫性尿失禁とは、「尿意切迫感と同時または尿意切迫感の直後に、不随意に尿が漏れるという愁訴」と定義されています。
さてこのような場合、第一選択薬となるのが抗コリン作用薬ですが、一般に全身のムスカリン受容体に作用するため、膀胱への選択性が高い薬物であっても、受容体遮断による全身性の副作用について注意が必要です。よく現われる副作用は、「口内乾燥」、「便秘」、「排尿困難」等と思われます。その他に「急性緑内障発作」、「QT延長・心室性頻脈」、「幻覚・せん妄」なども報告されています。
特に「メイラー医薬品の副作用大辞典第12版」には、「抗コリン薬で幻覚が起こることはよく知られており、そのために誤用されていることがある。」とあります。これらの薬剤が使用される年代には、「認知症」などを合併している可能性もあり、副作用判別は難しいと思いますが、観察を十分に行い、このような症状(幻覚・せん妄・見当識障害など)が発現した場合には服用を中止するように説明が必要と思われます。

(参考文献)

  • 過活動膀胱のプライマリ・ケア 井川 靖彦ら 薬局 Vol.57,No.11,p.33, 2006
  • 抗コリン薬のDIと過活動膀胱患者の薬学管理 松澤 直樹ら 薬局 Vol.57,No.11,p.59, 2006
  • メイラー医薬品の副作用大辞典 第12版,M.N.G.Dukes 編,秋田大学医学部 訳,P.348,1998
  • 各添付文書
Q51.
2型糖尿病患者の血糖コントロールの実態は、どのようになっているのでしょうか?
A.

 日本糖尿病学会は、2004年5月に「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン」を発表し、「血糖コントロールの指標と評価」について示しました。指標の項目はHbA1c、空腹時血糖値、食後2時間血糖値で、優、良、可(HbA1cのみ不十分と不良に分けられています)、不可に分けられています(表参照)。
近年、糖尿病治療薬の開発が進み、新しいタイプの経口薬やインスリンアナログ製剤が発売され、病態に合わせての処方が可能となってきましたが、患者の検査値(HbA1cや血糖値)を知らずに、多くの調剤薬局や病院薬局の外来で、服薬指導を行っているのが現状ではないでしょうか?
糖尿病データマネジメント研究会(JDDm)では、糖尿病診療データ管理ソフトCoDicを用いて、全国の糖尿病診療を専門とする施設より糖尿病診療に関する臨床データを集積し、解析しています。その結果、全薬物療法中、36%の患者が経口剤単剤、33%が経口剤複剤、11%が経口剤とインスリン製剤の併用、20%がインスリン製剤のみによる治療を受けていることが分かりました。全症例の平均年齢は62.5歳、平均罹病期間は12年、平均HbA1cは7.3%でした。そしてHbA1c6.5%未満の優および良領域の患者は29%、49%が可領域、22%が不可領域でした。
可領域は不十分および不良ですから、約7割もの患者がHbA1c6.5%以上のコントロール不十分から不可と考えられます。以上の結果より、薬物療法による積極的介入にもかかわらず血糖コントロールは合併症を防止する為には十分でないことが示されました。糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法です。服薬指導の際にも、厳重に指導してゆく必要があるように思われます。

(表)血糖コントロールの指標と評価
コントロールの評価 不可
不十分 不良
HbA1c(%) 5.8未満 5.8~6.4 6.5~6.9 7.0~8.0 8.0以上
空腹時血糖値(mg/dl) 100未満 100~119 120~139 140以上
食後2時間血糖値(mg/dl) 120未満 120~169 170~199 200以上

(参考文献)

  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン,日本糖尿病学会,2004.5
  • 2型糖尿病患者における薬物療法に関する実態調査(2),金塚 東ら,糖尿病,Vol.49,No.12,p919,2006
Q52.
脂肪乳剤の投与速度について教えてください。
A.

 市販脂肪乳剤の多くは大豆油を原料とした長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)を脂肪源としています。乳化剤として卵黄リン脂質を用いたO/W型の乳剤です。平均粒子径は0.2~0.4µmで、1µm以上の粒子は含まれていません。またグリセリンが等張化剤として添加されています。
脂肪乳剤は、必須脂肪酸のn-6系のリノール酸とn-3系のリノレン酸の補給目的で使用されている場合が多いです。しかし脂肪 1g は 9kcal の熱量を産生し、三大栄養素の中で最も効率の良いエネルギー源であるため、脂肪乳剤はエネルギー源としても利用されています。脂肪エネルギーの比率は20~25%が望ましいとされています。
さて、静脈内に投与された脂肪乳剤は、血中のアポ蛋白質と結合して筋肉や脂肪組織の血管内皮に存在するリポ蛋白リパーゼによる加水分解を受け、グリセロールと3分子の脂肪酸に分解されます。ですから急速に脂肪乳剤を静脈内投与するとアポ蛋白質の相対的不足を招きます。アポ蛋白質と結合できなかった脂肪粒子は、網膜系に取り込まれるなどして局所の免疫能低下をもたらす可能性があります。投与された脂肪乳剤が円滑に加水分解されるためには、脂肪の投与速度として0.1g/(体重)kg/hr(20%製剤の場合には25mL/hr)以下が推奨されています(添付文書の用法・用量には83.3mL/hr以下とされています)。肝硬変症例であっても代謝性であれば同程度の投与速度で問題はありません。
投与された脂肪乳剤が円滑に代謝されているかどうかは血清トリグリセリド(TG)値でモニターしてください。TGが300mg/dLを超える場合は、そのときの脂肪乳剤の投与速度が0.1g/kg/hr以下であるかを確認する必要があります。0.1g/kg/hrで投与してもTGが300mg/dLを超える場合には、投与速度を0.05g/kg/hrに下げます。TGが400mg/dL以上を示す場合は、外因性脂肪を利用できる状態ではないと判断して、脂肪乳剤の投与を中止します。

参考文献
小越章平ら:栄養療法ミニマムエッセンシャル,南江堂,2006.
井上善文:TPNレクチャー,南江堂,2004.
入山圭二:脂肪乳剤の構造と代謝特性. JJPEN20:841-847,1998.
島田慈彦ら:実践 静脈栄養と経腸栄養 基礎編,エルゼビア・ジャパン,2003.
イントラリポスR添付文書

Q53.
SU薬の二次無効について教えてください。
A.

 糖尿病治療薬(特にSU薬)を使用開始した当初は良く効いていたが、次第に効かなくなってしまい、インスリン治療を開始しないと血糖コントロールが良好にならないことはしばしば経験され、二次無効と呼ばれています。原因としていくつか考えられていますので、紹介します。

  1. 食事療法・運動療法の不徹底:2型糖尿病の治療の基本は食事・運動療法です。しかし患者としては「薬を開始したのだから食事・運動療法を多少緩めても構わないだろう」と誤解してしまうことがあります。薬の効果は強力ですから、薬剤使用開始当初は有効性が維持できるのですが、長時間になると維持できなくなります。食事・運動療法の徹底は口で言うのは簡単ですが、長期間実践することは容易ではないのです。
  2. 年齢によるβ細胞の機能低下:β細胞からのインスリン分泌能は年齢と共に徐々に低下することが知られています。またインスリン感受性も年齢と共にやや低下し、二次無効の要因となっています。
  3. 糖毒性:高血糖が長時間持続すると、インスリン分泌やインスリン感受性がますます低下し、さらに高血糖を招きます。この現象を糖毒性と呼んでいます。糖尿病治療薬を用いても中途半端にしか血糖が下がらなければ、糖毒性による二次無効が起こりえます。
    また近年、高血糖による酸化ストレスがβ細胞のアボトーシスを誘発するとの報告もあります。
  4. 高血糖を招く薬剤の併用:ステロイドやループ利尿薬、β遮断薬、インターフェロンなどが高血糖に影響を与える薬剤なので、注意が必要です。
  5. 特殊な病態の糖尿病:緩徐進行1型糖尿病、ミトコンドリア糖尿病などは、β細胞が徐々にですが進行性に破壊されて、最後にはほとんどインスリン分泌が消失します。これらの疾患は発見当初からインスリンを必要とする場合が多いのですが、中には最初は2型糖尿病と考えられて、経口血糖降下薬による治療が行われていることもあります。
  6. 薬剤によるβ細胞の疲弊:2型糖尿病患者のβ細胞は遺伝的にインスリン分泌能が低下しています。この低下を補うためにβ細胞はやや過剰に働き疲弊状態にあると考えられています。糖尿病治療薬のSU剤はβ細胞に刺激を与えるためにβ細胞の疲弊の程度が増してしまうと考えられています。

参考文献:

  • 経口血糖降下薬による血糖コントロールの限界 佐倉 宏 薬局 Vol.57, No.9, p35, 2006
  • 薬剤師のための糖尿病療養指導マニュアル,ミクス,2000. 11
  • 一歩進んだ糖尿病服薬指導,南江堂,2001.8
  • 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン,日本糖尿病学会,2004.5
Q54.
高脂血症の診断基準が改定されたと聞いたのですが、教えてください。
A.

 2007年4月に日本動脈硬化学会が前回から5年ぶりの改訂版「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版」を発表しました。

 2002年度版からの主な変更点は、

  1. エビデンス・推奨レベルをつけたステートメントの設置
  2. 診断基準・管理目標値の表から「総コレステロール」をはずし、代わりに「LDLコレステロール(LDL-C)」値と「HDLコレステロール(HDL-C)」値をそれぞれ別々に設定(表1)
  3. 「高脂血症の診断基準」を「脂質異常症の診断基準」に変更
  4. 患者カテゴリーを一次予防と二次予防に区別し、一次予防を低リスク、中リスク、高リスクに分類(表2)
  5. 低リスクでは、生活習慣の改善(喫煙・肥満など)を中心とするメッセージを重要視
  6. 「メタボリックシンドローム」の章を設けた、などが挙げられます。
表1 脂質異常症の診断基準(空腹時採血)
高LDL-C血症 LDL-C≧140mg/dL
低HDL-C血症 HDL-C <40mg/dL
高トリグリセリド(TG)血症 TG ≧150mg/dL
この診断基準は薬物療法の開始基準を表記しているものではない。薬物療法の適応に関しては他の危険因子も勘案し決定されるべきである。
総コレステロール(TC)で判断するときは220mg/dL以上を高LDL-C血症の目安とする。原則としてLDL-Cで評価し、TC値は参考値とする。LDL-Cは直接測定法を用いるがFrie-dewaldの式で計算する。
(LDL-C=TC-HDL-C-TG/5(TG<400mg/dLの場合))TG≧400mg/dLの場合は直接測定法にてLDL-Cを測定する。

表2 リスク別脂質管理目標値
治療方針の原則 カテゴリー 脂質管理目標値(mg/dL
  LDL-C以外の主要危険因子 LDL-C HDL-C TG
1次予防
まず生活習慣の改善を行った後、薬物治療の適応を考慮する。
1
(低リスク群)
0 <160 ≧40 <150
2
(中リスク群)
1~2 <140
3
(高リスク群)
3以上 <120
2次予防
生活習慣の改善と共に薬物療法を考慮する。
冠動脈疾患の既往 <100
脂質管理と同時に他の危険因子(喫煙、高血圧や糖尿病の治療など)是正する必要がある。
LDL-C以外の主要危険因子:加齢(男子≧45歳、女子≧55歳)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族歴、低HDL-C血症(<40mg/dL)糖尿病、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の合併カテゴリー3とする。
Q55.
抗菌点眼薬の臨床効果を予測する指標に何かありますか?
A.

 抗菌薬の抗菌力の強さは、培養した細菌を使って試験管内で測ることができますが、臨床での効果は、その薬剤がどの程度感染部位に移行し、どの程度有効濃度を維持するかによって左右されます。そこで抗菌力の指標(PD:pharmacodynamics)と、感染組織への移行性を表す薬物動態の指標(PK:pharmacokinetics)の両者を組合せて考えることが重要となり、効果と相関するPK-PDパラメータが存在します。このパラメータにより抗菌点眼薬を評価することで、臨床効果を予測した薬剤選択が可能となります。
ある薬剤のある微生物に対する発育阻止効果を、試験管内でテストする場合に、その微生物の発育に適した培地に、調べようとする薬剤の段階的濃度を含有させ(例えば倍数希釈系列)、それぞれの培地にその菌浮遊液を接種します。培養後、その菌発育を観察し、発育の阻止された最も低い薬剤濃度(µg/mL)を最小発育阻止濃度(MIC)といい、抗菌力の指標として用いられます。
眼内に移行する薬剤の80%は、角膜を透過して房水内に入るため、房水内の薬剤濃度は、点眼薬の眼内移行動態を最もよく反映していると考えられます。そこで、点眼薬の眼内移行性の良否を決定する指標として、房水内最高濃度値(AQCmax)を用いることが提案されています。点眼薬のAQCmaxが高い薬剤ほどAQTmax(AQTmaxに到達する時間)が短く、しかもAUCが大きくなる傾向があり、AQCmaxの値が高いほど臨床的に有用である可能性が示唆されています。
AQCmax/MICとは、眼内移行動態を表すAQCmaxと個々の菌に対するMICの比で、眼内における薬剤効果を予測するための指標です。数値が大きいほど、優れた臨床効果が期待できます。点眼薬の臨床効果を予測する上で、信頼性の高い指標と考えられています。

参考文献:あたらしい眼科 17 (臨増):37~40, 2000

Q56.
「インクレチン」とは何ですか?
A.

 同量のブドウ糖を経口投与した場合と静脈投与した場合、どちらがインスリンの分泌が多いと思いますか?答えは、経口投与です。えっ!?と思われた方もおられるでしょうが、実は消化管ホルモンが関係しており、そのホルモンがインクレチンなのです。インクレチンには、GLP-1*とGIP**があります。GLP-1は小腸と大腸の「L細胞」から放出され、GIPは十二指腸の「K細胞」から放出されます。
GLP-1は、グルカゴンと同じ遺伝子 proglucagon の配列から作られるペプチドホルモンです。主な作用としては、ブドウ糖濃度依存性インスリン分泌促進作用、ランゲルハンス氏島β細胞増殖作用、グルカゴン分泌抑制作用、胃排泄能抑制作用、中枢性食欲抑制作用などがあります。GLP-1を分泌するL細胞は小腸にも大腸にも存在し、食物繊維が腸内バクテリアによって分解されたときに作られる有機酸(短鎖脂肪酸)がGLP-1の放出を刺激することが解明されました。しかし実際のGLP-1は分泌されるとすぐに酵素DPP-4***により分解され失活します。血中半減期は5分程度とされています。そこで、酵素によって分解されないGLP-1誘導体(アメリカ南西部に生息する「ヒーラ巨大トカゲ Gila monster lizard)」の毒から発見されたペプチドホルモンなど)やDDP-4阻害剤の研究が進められています(どちらとも本邦では Phase 3進行中)。脂肪もL細胞からGLP-1を放出させますが、肉に多くある「飽和脂肪酸」や植物油・魚の「不飽和脂肪酸」よりも、オリーブオイルにあるオレイン酸のような「モノ不飽和脂肪酸」が、機序はまだ良く分かっていませんが、一番効果的にGLP-1を放出させたという報告があります。またGLP-1は、血糖値が低いときはインスリン分泌を刺激しないという特徴もあります。
近年、経口糖尿病薬やインスリン製剤、そして今回のような新しいタイプの薬剤の開発が進み、患者の病態に合わせた併用薬の多様化が進んでいます。しかし忘れていけないのは、どんなにすばらしい薬剤が開発されたとしても、2型糖尿病において最も重要なのは正しい食事療法と適切な運動療法を行うことが治療の基本であることに変わりがないということです。

・GLP-1*:glucagon-like peptide-1
・GIP**:glucose-dependent insulinotropic polypeptide
・DPP-4***:dipeptidyl-peptidase-4

参考文献:
・糖尿病治療薬・糖尿病合併症治療薬 横田 太持ら 医薬ジャーナル Vol.43, S-1, p339, 2007

Q57.
メトホルミンの有用性について教えてください。
A.

 メトホルミンはビグアナイド薬(BG薬)として、スルホニル尿素薬(SU薬)と共に古くから糖尿病治療薬として使われていましたが、類薬のフェンホルミンに乳酸アシドーシスという重篤な副作用があることが知られ、また具体的なメカニズムも不明であったため、比較的使われにくい存在となりました。しかし近年の大規模臨床スタディでその有用性が見直されてきています。
以前よりBG薬の血糖降下作用は、膵臓を刺激してインスリン分泌を増強する膵内作用ではなく、膵外作用と推測されていました。肝臓での糖新生抑制作用が主ですが、筋肉でのインスリン感受性の増大なども有しており、チアゾリジン薬(インスリン抵抗性改善薬)と似ています。メトホルミンの作用機序については、下図に示します。

図 メトホルミンの作用機序(文献1より改変)
図 メトホルミンの作用機序(文献1より改変)
AMP:アデノシン リン酸、ACC:acctylCoA carboxylase
SREBP-1:Stero Rogulatory Element-binding Protein-1
FA:脂肪酸、 VLDL:超低比重リポ蛋白

 臨床効果のエビデンスですが、1995年にDeFronzoらがランダム化比較試験によってメトホルミンの血糖改善効果、脂質改善効果、および安全性が示されました。この研究によりビグアナイド薬は再評価され、以降欧米では非常に多く使われるようになりました。その他UKPDSやDPPなどでもメトホルミンが高く評価されています。
添付文書には、「インスリン非依存型糖尿病(ただしSU剤が効果不十分な場合あるいは副作用等により使用不適当な場合に限る)」とあります。しかし実際には、前述したような臨床スタディの成績を踏まえて、インスリン抵抗性がある場合に、第一選択薬あるいは併用薬として用いられます。 
インスリン抵抗性が高いとは、BMI≧25、メタボリックシンドロームである、早朝空腹時血清インスリン値(µU/mL)≧15、インスリン抵抗性指標HOMA-R(空腹時血糖値×空腹時血清インスリン値/405)≧2.5などがあげられます。
最後に副作用ですが、乳酸アシドーシスは80000件に1件といわれています。むしろ日常的に経験 するのは、悪心・下痢などの消化器および腹部症状です。これらは少量から開始し、徐々に増量することによって回避できると言われています。

参考文献:

  1. Zhou G,et. al:Role of AMP kinase in mcchanism of metformin action. J Clim Invest 108:p1167,2001.
  2. ビグアナイド薬 林 道夫 薬局 Vol.57,No.9,p9,2006
  3. 2型糖尿病の中での塩酸メトホルミンの使用意義 佐倉 宏 医薬ジャーナル Vol.43,No.7,p1272007
Q58.
片頭痛治療薬のトリプタン系薬剤について教えてください。
A.

 片頭痛は女性に多く起こり、男性の3倍以上ともいわれており、特に30代から40代の女性の有病率は約20%にのぼります。発作が起こると拍動性の頭痛に苦しみますが、それ以外にも悪心、嘔吐、光過敏、音過敏がよくみられ、診断基準にも記載されています。その他にめまい感、無力感、脱力感、気分の変調、離人感などもおこり、著しく身体活動が制約されてしまいます。
日本頭痛学会の慢性頭痛診療ガイドライン(平成17年3月)には、片頭痛急性期治療薬には、1-アセトアミノフェン、2-NSAIDS、3-エルゴタミン製剤、4-トリプタン系薬剤、5-制吐剤があり、片頭痛の重症度に応じた層別治療が推奨されています。すなわち、軽度~中等度の頭痛にはNSAIDS、中等度~重度の頭痛、または軽度~中等度の頭痛でも過去にNSAIDSの効果がなかった場合にはトリプタン系薬剤が推奨されています。いずれの場合も制吐薬の併用は有用とされています。
トリプタン系薬剤として現在4剤(イミグラン®、ゾーミッグ®、レルパックス®、サクサルト®)が市販されています。作用メカニズムは、血管壁の5-HT1B受容体の刺激により拡張した硬膜血管を収縮させ、また三叉神経の5-HT1D受容体に作用して過敏になった三叉神経を鎮静、正常化させることにより硬膜の三叉神経血管系の神経原性炎症を抑制すると考えられています。
副作用は一過性の喉や頚部の締め付け感、めまい感などがあります。この他に身体各部の痛み、悪心・嘔吐、動悸、倦怠感、眠気などが報告されています。トリプタン系薬剤には血管収縮作用があるので、虚血性心疾患や血管障害には要注意で、心筋梗塞、虚血性心疾患、脳血管障害、一過性脳虚血性発作のある患者、コントロールされていない高血圧の患者には使用できません。また悪心・嘔吐や眠気はトリプタン系薬剤の副作用として記載されていますが、片頭痛の随伴症状でもありますので、片頭痛の症状か薬剤の副作用の症状かの区別に注意が必要です。
服薬タイミングですが、痛みが中等度以上になることが予測される片頭痛発作では、頭痛がひどくなるまで服薬を待つ必要はなく、なるべく早期に使用したほうが高い有効性が示されています。また手のしびれ感など皮膚アレディニアが出現するとトリプタンの効果が得られにくくなるとの報告があり注目されています。ですから至適な服薬タイミングは、頭痛が始まってなるべく早期に、軽度の頭痛時でアレディニアが発現する前が良いとされています。前兆および発作の時刻とその症状、薬の服用時間とその後の経過などを記録し、最も良いタイミングを主治医と共に見つけ出すことが大切と思います。 日本頭痛学会のホームページ(http://www.jhsnet.org)には「頭痛ダイアリー」の見本が掲載されていますので、参考にしてください。

参考文献:
・慢性頭痛診療ガイドライン,日本頭痛学会,2005
・特集 女性の片頭痛,薬局,Vol.58, No.7, 2007

Q59.
胃潰瘍ガイドラインについて教えてください。
A.

 厚生労働省の21世紀型医療開拓推進事業「科学的根拠に基づく胃潰瘍診療ガイドラインの策定に関する研究班」によって「EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン」が2003年に出版されました。そして2007年4月に「胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班」が、わが国における胃潰瘍診療ガイドラインの実地臨床の場における普及状況や適用上の問題点等に関して行った調査・検討を踏まえ、新たな文献的エビデンスも取り入れて第2版を出版しました。
旧ガイドラインの基本的な考え方や診療の流れ(フローチャート(下図))には大きな変更は加えられませんでした。主な変更点としては、内視鏡的止血法、NSAID潰瘍の治療や予防、除菌薬のレジメン、COX-2阻害薬の日本での保険適用追加に伴う修正です。
また、診療勧告は推奨グレード案に基づきAからEまでに分類されました。特に、推奨グレードの表現が曖昧であったグレードCについては、十分な科学的根拠がないが、勧めることを考慮してもよいを「C1」、十分な科学的根拠がないので、推奨できないを「C2」に細分化して、明確化を図られました。

図 胃潰瘍診療のフローチャート

 NSAID胃潰瘍の治療には、H.pylori感染の有無に関わらずNSAIDの中止が第一 選択です(グレードB)。投与継続が不可避の場合は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)あるいはプロスタグランジン(PG)製剤により治療を行ないます(グレードB)。そしてNSAID継続下での再発防止には、PPI、PG製剤あるいは高用量のH2受容体拮抗薬(H2RA)が有効です(グレードB)。しかしPG製剤は様々な消化器系の副作用(下痢、腹痛など)を引き起こすとの報告があり、臨床上の有効性はありますが、適応性に制限が加わります。また低用量アスピリン投与下での再発防止にはPPIを用いることを勧めています(グレードB)。
H.pylori再除菌については、PPI、アモキシシリン(AMPC)、メトロニダゾール(MNZ)を用いた3剤併用療法が推奨され(80%以上の除菌率が期待される)、平成19年8月に保険適応が追加されました(グレードB)。(※ガイドライン発行時(平成19年4月)は、まだ追加されていませんでした。)
H.pylori感染の非除菌治療としては、PPIが第一選択です(グレードA)。そしてPPIを使用できない場合にはH2RAを優先し(グレードA)、それも使用できない場合は、選択的ムスカリン受容体拮抗薬(塩酸ピレンゼピン)もしくは一部の防御因子増強薬(スクラルファート、ミソプロストール、エンプロスチル)のいずれかを投与することを勧めています(グレードB)。その他の防御因子増強薬は、単剤投与では酸分泌抑制薬と同等の胃潰瘍治療効果を期待できないことから、単剤では第一選択として勧められていません(グレードC1)。PPIと防御因子増強薬の併用療法に関しては、胃潰瘍治癒効果がPPI単剤投与を上回るというエビデンスがなく、現時点では勧められていません(グレードC2)。H2RAと防御因子増強薬の併用療法に関してもエビデンスが十分でなく、勧められていません(グレードC1)。
生活指導について、胃潰瘍治療が行なわれた場合、「入院安静、喫煙、飲酒の制限、食事指導などの有効性を示すエビデンスはなく、現時点では行なうように勧められる根拠は明確ではない。ただし、喫煙や過度の飲酒による重大な健康被害は明白であり、禁煙、節煙、適切な食事指導は、胃潰瘍治療とは関係なくとも、健康増進の上から適切なものと考えられる。」とされています(グレードC1)。

表:勧告レベルのグレード分類(Minds 推奨グレード案)
レベル 内  容
行うよう強く勧められる
行うよう勧められる
C 1 十分な科学的根拠はないが、行うことを考慮してもよい
C 2 十分な科学的根拠がないので、推奨ができない
行わないよう勧められる
行わないよう強く勧められる

参考文献:
EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン、胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班、2007.4
診療ガイドラインシリーズVol.18 中澤 三郎 メディカル朝日、2007.11

Q60.
高山病の予防について教えてください。
A.

 高山病(High Altitude Illness とは、2000m以上の高地で酸素が欠乏することによって引き起こされる障害です。ただし高齢者においては、1500m以上を高地と考える必要があります。
高山病は、1-山酔い(AMS;Acute Mountain Sickness)、2-高所肺浮腫(HAPE;High-Altitude Pulmonary Edema)、3-高所脳浮腫(HACE;High-Altitude Cerebral Edema)の3つに分けられます。
山酔いは、急性高山病と訳されることもあります。
山酔いは、高山病の初期症状です。通常は高地に着いて4~12時間以内に発症し、頭痛、吐き気、嘔吐、疲労感、脱力感、立ちくらみ、めまい、睡眠障害などが起こることがあります。症状は24~36時間続きます。山酔いはより重症な高山病に進行することもあります。
高所肺浮腫は、数時間の間に軽い症状から命に関わる症状に進行することがあります。症状は、しばしば高地に着いてから2日目の夜に発症し、夜間に悪化して重症型に進行していきます。安静時でも呼吸困難となり、血痰、微熱、チアノーゼなどが起こることがあります。
高所脳浮腫では、最初は軽いタイプの高山病と同じ症状を示しますが、数時間以内に軽い症状から命に関わる状態にまで急速に進行します。頭痛、精神錯乱、運動失調がおき、やがて昏睡状態となって、死亡することがあります。
高山病を予防するには、ゆっくり登るのが最良の方法です。時間をかけて徐々に高度を上げていけば、空気の薄い状態に体が慣れます。またアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)が高山病予防に有効であるといわれています。用法・用量は、「1回125mgを1日2回、到着前日から4日間服用」が一般的投与法と言われていますが、まだ至的投与量の比較検討はされていません。また本邦では、予防投与は保険診療とはなりませんので、実費となります。
アセタゾラミドの高山病予防の主作用は、1-脳血管を拡張し、血流量を増加させ、脳の酸素不足を改善する。2-呼吸中枢刺激剤として全身の低酸素状態を改善する。の2つといわれています。
国際登山医学会では、予防としてのアセタゾラミドは例外を除き、勧めていません。例外とは1-救助などで急激に高度を上げなければならない人、2-過去に何度も高山病を経験した人、3-夜間の周期性呼吸で睡眠を妨げられる人、です。またスルホニルアミド系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者が禁忌とされていますので、注意が必要です。

参考文献:
ルクマニュアル(第17版、日本語版)、ダイアモックス添付文書
参考ホームページ:
国際登山医学会、日本山岳会医療委員会、日本登山医学会、日本旅行医学会、
メルクマニュアル医学百科 最新家庭版、品川イーストクリニック

Q61.
接触性皮膚炎について教えてください。
A.

 接触性皮膚炎(俗称:かぶれ)は、通常、一次刺激性接触皮膚炎(ICD,Irritant Contact Dermatitis)とアレルギー性接触皮膚炎(ACD,Allergic Contact Dermatitis) の2つに分けられます。ICDは原因物質に触れたら誰でも起こり、原因物質の毒性の強さによって、症状の強さが決まります。ACDは原因物質に対してアレルギー的に感作された人だけ起こり、原因物質の毒性の強さと症状の強さは相関しないようです。一般にいうかぶれはACDを指すことが多く、かぶれはアレルギーのある人のみ生じ誰にでも起こるわけはないということです。
症状は、掻痒を伴う発疹が、原因物質の接触した部分に出現します。発疹の特徴として、発赤・水泡・びらんなどの湿疹の経過をたどる皮膚炎です。また接触性皮膚炎症候群という病態があり、原因物質の接触した以外の部分にも湿疹が広がることで、掻いて広がる場合をいいます。これがさらに全身に広がることがあり、自家感作性皮膚炎と呼ばれます。
原因物質としては、化学製品、食物、植物、金属、衣料品、ゴム製品、その他に分類され、比較的気づきやすいものは、化粧品、接触した植物、湿布薬、職場で使用する化学薬品などです。比較的気づきにくいものは、革製品などの衣類、洗い流してしまうシャンプーや洗浄剤、傷口に使う消毒薬、化粧の際に使うビューラーによる金属アレルギーなどがあります。
診断および検査は、ICDは、アレルギーとは無関係なため、特に検査を行うことはありません。ACDの診断ポイントとしては、まず発症前に新しく皮膚に接触したものはなかったか、化粧品や装飾品で変わったものはないかということから始めますが、今まで問題がなかった物質でも、あるときからダメになることもある、ということを患者に十分説明することが大切です。ACDの確実な診断は貼布試験(パッチテスト)で、疑わしい物質を皮膚に貼付し、48時間後に皮膚の反応を見るという検査です。4型アレルギーの代表的な検査法であり、陽性反応は、紅斑・浮腫・小水泡などの湿疹が貼付した部分にできます。(あくまで4型アレルギーなので好酸球やⅠgEは関与しません。)金属アレルギーの場合は1週間たって陽性反応が出ることもあるため、診断に時間がかかります。
治療は、原因物質の被爆を防ぐことが重要です。その上で、ステロイド薬を中心とする外用剤を湿疹の部分に使用します。痒みが強い場合は、抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬の内服薬を使用します。発疹の症状が強い場合や自家感作皮膚炎の場合は、ステロイド内服薬や注射薬等、全身投与が必要になることもあります。患者様の中には、軟膏を塗る時はゴシゴシすり込んだほうが良いと思い込んでおられる方が多いので、すり込むと炎症やカユミがひどくなるので、手のひらや指の腹で薄く軟膏を広げるような気持ちでやさしくのばすように、と指導しましょう。

参考文献:接触皮膚炎,薬局,Vol.58,No.4,2007,p.636

Q62.
ジェネリック(GE)医薬品の比較検討できるホームページはありますか?
A.

 ご存知のことと思われますが、今年度の診療報酬改訂の「4-2後発医薬品の使用促進等」において、「後発医薬品の更なる使用促進のために、『後発医薬品の使用促進のための環境整備の骨子』に基づき、環境整備を行う。」と記載されましたので、今後ますますGE医薬品の情報収集が必要となってきます。
書籍では「医療用医薬品品質情報集」(通称オレンジブック)が有名で、その他にも「比べて分かるジェネリック医薬品データブック」(薬事日報社)、「今日のジェネリック医薬品」(南江堂)などが、出版されています。
GE医薬品の健全な育成と普及を目指した「日本ジェネリツク医薬品学会」のホームページ(http://www.ge-academy.org/)には、医療関係者でシステム会員になれば、誰でも検索できるジェネリック医薬品・情報検索システム「GIS」(http://www.ge-academy.org/GIS/)がありますので、以下に検索方法について、簡単に紹介します。
まず検索画面から一般名を入力して検索ボタンをクリックすると、「医薬品名」、「販売元会社」、「薬価」等の一覧が出てきます。その中から知りたい医薬品名をクリックしていくと「医薬品詳細情報」が閲覧でき、「製品基本情報」、「メーカー情報」、「写真画像」、「科学的データ」、「情報収集」、「医療機関での採用情況」などについて確認できます。また「添付文書」や「インタビューフォーム」、「後発医薬品情報提供用資料(案)」などのPDFファイルに直接リンクし、ダウンロードできるようになっています。
同種・同規格のGE医薬品を比較することもでき、「オレンジブック収載の有無」、「先発品との適応症の同一性の有無」、「特許トラブルの有無」、「確認試験データ添付の可否」、「付加価値情報」、「市販後調査結果」などが一覧で見ることができます。
メーカー情報については、「販売元会社基本情報」、「剤形別販売品目数」、「薬効別販売品目数」、「販売に関わる連絡先」、「情報収集・提供」、「供給体制・対応」、「取り扱い医薬品一覧」、「取引業者」などが確認でき、医薬品の販売元会社の比較も一覧で行うことができます。
学会に登録していないメーカーのものは検索できませんが、多くの医薬品の情報について閲覧でき、有用かと思われます。詳細は、学会ホームページをご覧下さい。

その他GE関連ホームページ
・オレンジブック総合版ホームページ(http://www.jp-orangebook.gr.jp/
・ジェネリック医薬品等評価研究会ホームページ(http://generic.ochis-net.jp/index.htm

Q63.
インスリン・グラルギンとインスリン・デテミルの違いについて教えてください。
A.

 インスリンは21個のアミノ酸からなるA鎖と30個のアミノ酸からなるB鎖が2ヶ所のジスルフィド結合でつながっている2本鎖のポリペプチドです。現在、わが国で使用されているインスリン製剤は、ヒトインスリン製剤(速効型、中間型)とインスリンアナログ製剤(超速効型、持効型)があります。速効型(レギュラーインスリン)は6量体を形成していますが、皮下組織で2量体→単量体に分離して血管より吸収されます。そして6量体形成を阻止して吸収を速めたのが超速効型、プロタミンを加えて結晶を形成させて作用を持続させたのが中間型インスリンです。
中間型インスリンの問題点として、1-作用にピークがあり夜間低血糖が起きやすい、2-持続時間が短めであるので早朝高血糖が見られる、3-皮下からの吸収にバラツキがあり血糖コントロールが不安定になる、4-使用時に撹拌混和が必要である、などが挙げられます。そこでこれらの問題点を解決するために登場したのが、持効型インスリンです。
持効型インスリンには、インスリン・グラルギン(商品名:ランタスR)とインスリン・デテミル(商品名:レベミルR)の2つがあります。
グラルギンは、バイアル内は約pH4の無色透明な溶液で、皮下に注射すると直ちに生理的pH7.4により、等電点沈殿物として結晶となり徐々に溶解して吸収されます。皮下注射後1~2時間で作用が発現し、明らかなピークはなく約24時間血糖降下作用を有します。
デテミルはB鎖30位アミノ酸(スレオニン)を除去して29位アミノ酸(リジン)に脂肪酸(ミリスチン酸)を結合したものです。脂肪酸側鎖は6量体の凝集およびダイヘキサマー(6量体同士が結合した複合体)の形成に寄与し、これにより単量体への解離および吸収が遅延します。また単量体の状態では、脂肪酸側鎖によってアルブミンと結合する特性をもっており、循環血液中では生物学的活性を有する遊離型と、活性を有さない結合型が平衡状態に達することで、持続した作用を維持できます。皮下注射後約1時間で作用が発現し、最大効果は3~4時間から14時間まで発揮し、約24時間血糖降下作用を有しますが、人によって作用時間が異なり、1日1~2回の投与とされています。しかしNPH製剤(中間型)やグラルギンと比較して、固体間でのバラツキが少ない、体重増加がないなど、報告されています。
なお国内においてデテミルは昨年12月に発売されたばかりなので、今後、多くの臨床報告が待たれます。

参考文献:
・糖尿病,薬局,Vol.59,No.4,2008,p.558
・糖尿病・糖尿病合併治療薬,医薬ジャーナル,Vol.44,S-1 ,2008,p.400
・糖尿病治療薬,薬局,Vol.58,No.4,2007,p.823
・各添付文書

Q64.
シイタケ皮膚炎について、教えてください。
A.

 シイタケは、食用キノコとして日本人の食生活に欠かせない食材であり、現在、ほだ木による人工栽培が行われています。栄養学的にはビタミンDの前駆体であるエルゴステロールの含有量が多いほか、ビタミンB群、ミネラル、食物繊維なども豊富に含まれています。しかし、シイタケを食べた後に皮膚炎が生じることがあり、シイタケ皮膚炎と名前がついていることは、あまり知られていないようです。
シイタケ皮膚炎は、生あるいは加熱の不十分なシイタケやシイタケの抽出エキスを摂取後、 だいたい当日から翌日に生じます。臨床的には、全身に掻破痕に一致する線状の紅色皮疹を特徴とし、必ず強い痒みを伴います。手背や手指に多数の漿液性紅色丘疹を認めることもあります。発熱、神経症状、消化器症状はなく、全身状態は良好です。
干シイタケや煮シイタケによるものはまれで、ほとんどが十分に加熱されないまま食べることの多い焼きシイタケで発症することから、原因は生シイタケ中の加熱により容易に破壊される物質、あるいはシイタケから熱水抽出される物質が推測されています。またシイタケ子実体から熱水抽出、精製された抗腫瘍性多糖体のレンチナンが有力視されていますが、レンチナンによる皮疹は点状出血ですが掻痒を伴わないことなどから、特定されるまでには至っていません。
治療は、抗ヒスタミン薬あるいは抗アレルギー薬の内服とステロイド外用剤とを対症的に投与するのが一般的で、症状が重篤な場合はステロイド薬の短期間内服が追加されます。だいたい数日以内に治癒します。
その他に、シイタケ胞子吸入による過敏性肺炎やシイタケによるイレウスが報告されています。

 参考文献:
・シイタケによる中毒疹、きのこ中毒、山下・古川著、1993,p.166
・食品安全性情報、NO.18,2004,P.24
・健康食品データベース、(独)国立健康・栄養研究所監訳
・皮膚病変から学ぶアレルギーの鑑別、皮膚アレルギーフロンティア、Vol.1,No.1,2003-9,p.57
・しいたけ皮膚炎の皮膚症状、診断と治療、Vol.83,No.2,1995,p.401

Q65.
自癬の治療薬について教えてください。
A.

 皮膚真菌症に含まれる足自癬(通称:水虫)は、人口の4人に1人は感染していると言われています。原因菌(T.rubrumとT.mentagrophytesの2菌種で全体の約90%を占めると言われています。)は、皮膚糸状菌(自癬菌)と呼ばれ、皮膚の角層、毛、爪などのケラチン組織を好んで寄生します。
原因真菌が角層に存在する場合は、外用療法が第1選択となりますが、角層が非常に厚い場合や原因真菌が爪や毛に寄生している場合は、外用抗真菌薬が十分に浸透しないため、経口抗真菌薬の内服療法が必要となります。外用抗真菌薬の剤形には、軟膏・クリーム・液・ゼリー・スプレーなどがあり、症状に応じて使用されています。いずれにしても、自己判断で違った薬を使用すると症状が悪化することもありますので、皮膚科などの専門医で診察を受け、正しい治療薬を使用することが大切です。
以下に、主な抗真菌薬を記載します。

表:抗真菌薬一覧(医療用、OTC薬)
系 統 一 般 名 医療用商品名 OTC商品名
チオカルバミン酸系 リラナフタート ゼフナート  
  トルナフタート ハイアラージン コザック
セパリンZ
イミダゾール系 ケトコナゾール ニゾラール  
  ルリコナゾール ルリコン  
  ラノコナゾール アスタット ウインダム
ゼスパート
  クロトリマゾール エンペシド スコルバ
ピロエースW
  ミコナゾール硝酸塩 フロリードD ダマリンL
  エコナゾール硝酸塩 パラベール 新ポリカイン
  オキシコナゾール硝酸塩 オキナゾール スコルバLX
スコルバ24
  スルコナゾール硝酸塩 エクセルダーム エクシプ
  ビオナゾール マイコスポール バイクリアプラス
  ネチコナゾール塩酸塩 アトラント アトラントエース
ベンジルアミル系 ブテナフィン塩酸塩 ボレー メンタックス ブテナロック
ラマストンMX
スコルバダッシュ
アリルアミン系 テルビナフェン塩酸塩 ラミシール ラミシールAT
モルホリン系 アモロルフィン塩酸塩 ペキロン トークール
ダマリンエース
その他 シクロピロクスオラミン バトラフェン ラマストン
ラマストンプラス
Q66.
禁煙治療について教えてください。
A.

 2008年4月18日に日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会の3学会で「禁煙治療のための標準手順書第3版」が発行されました。今回の主な改訂は、2008年3月に新しい禁煙補助薬バレニクリンが薬価収載されたこと(5月8日発売開始)、および同年4月の薬価収載に伴い、ニコチン依存症管理料を算定する禁煙治療を行っている患者が、治療途中で入院し、引き続き禁煙治療を実施した場合、その治療に要した薬剤料を算定することができるようになったことによって行われました。
  現在使用されている薬物療法には3種類あり、下記に、それぞれの薬剤の特徴を示します。今までの禁煙薬物療法は、ニコチン製剤によるニコチン置換療法のみでしたが、バレニクリンは、次の2つの作用が禁煙効果を高めています。[1]α4β2ニコチン受容体を部分的に刺激し、少量のドパミンを放出させることによって禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減します。(作動薬作用)[2]α4β2ニコチン受容体にニコチンが結合するのを阻害するため、バレニクリンを服用中に再喫煙した場合には、喫煙による満足感を抑制します。(括抗作用)
費用については、医療機関で、ニコチンパッチを使用した場合40,010(自己負担額:約12,000円)、バレニクリンを使用した場合61,440円(自己負担額:約18,400円)となります。

表:各禁煙治療剤の特徴
ニコチンガム ニコチンパッチ バレニクリン
・薬局来店での購入のみ。
・タバコを吸いたくなったときに1個をゆっくり噛む。
・標準的な用量は、1日4~12個を4週間使用し、その後1週間ごとに1日あたり1~2個ずつ減量。原則3ケ月で終了。
・主な副作用は、嘔気、咽頭刺激など。
・保険診療、及び薬局薬店で購入できる。
・肩、胸、腕などに貼り、1日1回張り替える。
・標準的用量※(医療用)は、30cm2製剤を4週、20cm2製剤を2週、10cm2製剤を2週使用。
・主な副作用は、かぶれ、不眠など。
・保険診療のみ、使用可能。
・決められた薬剤を、1日1~2回服用する。
・標準的用量は、禁煙開始1週間前から行い、1~3日は0.5mgを1日1回、4~7日は0.5mgを1日2回、8日以降は1mgを1日2回投与し、投与期間は12週間で終了。
・主な副作用は、嘔気、不眠症、異常な夢、頭痛、鼓腸など。

※一般用医薬品の場合、
[1]20cm2製剤を6週、10cm2製剤を2週使用。
[2]30cm2製剤を6週、20cm2製剤を2週、10cm2製剤を2週使用。の2種類が発売されています。

参考資料:
日本循環器学会 日本肺癌学会 日本癌学会編、禁煙治療のための標準手順書第3版、2008.4

Q67.
GFO療法について、教えてください。
A.

 GFO療法とは、グルタミン(G)、水溶性の食物繊維(F)、オリゴ糖(O)を水に溶かし、経口あるいは経腸的に投与することです。大塚製薬では製品化し、GFO®とて発売しています。下記の写真と成分一覧をご参照ください。
 臨床的目的は主に[1]腸管粘膜の萎縮防止、[2]腸管由来の免疫能を促進することで感染症の発生予防、[3]腸内細菌に働きかけることで腸内細菌叢を整え、腸内環境を改善する、などがあげられます。基本的にどの患者にも適応可能ですが、主な適応症例として消化管の術後、MRSA腸炎、腸機能障害、偽膜性腸炎などです。
 グルタミンは、消化管における粘膜やリンパ球などの細胞分裂のきわめて早い細胞にとって主要なエネルギー源であり、消化管における粘膜構造の維持と透過性亢進の予防によるバクテリアル・トランスロケーション(BT)の防止、腸管における免疫機能の強化などの機能を持ちます。
 水溶性食物繊維は、食品成分の腸内移動速度を調節し栄養素の吸収速度効率を変化させることで腸管の機能改善に関与します。
 オリゴ糖および水溶性食物繊維は腸管まで運ばれると「プレ・バイオティクス(結腸内の有用菌を増殖させるか有害菌を抑制することで宿主の健康に有益な作用をもたらす)」として腸内細菌により発酵分解され、短鎖脂肪酸となり、これらは腸内のpHをを低下jさせることで酸に耐性のビフィズス菌などの乳酸菌が増殖し、酸に弱い腐敗菌である有害菌が減少して腸内細菌叢が改善されます。

図:粉末清涼飲料「GFO®」 表:「GFO®」成分表
図:粉末清涼飲料「GFO®」 エネルギー 36kcal
タンパク質 3.6g
脂質 0g
糖質 6.01g
食物繊維(F) 5.0g
ナトリウム 0.2~1.2㎎
ラクトスクロース(O) 1.45g
グルタミン(G) 3.0g

参考文献:
藤澤ら、栄養療法・管理Q&A、薬局、Vol.59,7月臨時増刊、2008,p.249
丸山編、経腸栄養バイブル、2007

Q68.
ドーピングについて、教えてください。
A.

 2008年の夏はオリンピックが開催され、メダル獲得を目指して多くのアスリート達が競争し、多くの国民が応援しました。しかし日本人ではいませんでしたが、禁止物質使用によりメダルを剥奪されたものもいます。また大相撲でも薬物乱用が報道され、ドーピング等の薬物に対する一般の方々の関心が大きく高まっています。
  日本薬剤師会は、ドーピング防止活動の一環として(財)日本体育協会アンチドーピング部会ドーピングデータベース作業班、大分県薬剤師会、秋田県薬剤師会等と協力し、「薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2008年版」を作成されましたので、紹介します。
その序文にもありますように、「ドーピング目的で禁止物質を使用するつもりがなくても、市販のかぜ薬などを服用しただけでドーピング陽性になることがあります。…(中略)…このような『うっかりドーピング』を最も有効に防止することができるのは、医薬品を直接販売する薬局・薬店の薬剤師です。
内容は、2008年世界ドーピング防止機構(WADA)禁止表掲載のドーピング禁止薬物の作用と禁止医薬品例、特に気をつけたい一般用医薬品と健康食品・サプリメント、使用可能リスト(一般用・医療用)などについて、記載されています。
禁止薬は下記のとおりで、麻薬に関してはペンタゾシン等の非麻薬性鎮痛剤も含まれていますので注意が必要です。また禁止物質であってもホルモン剤(インスリン類等)などのような治療目的であれば、所定の手続きによって使用が認められることもあります。(「治療目的使用に係る除外措置」)。
詳細につきましては、日本薬剤師会のホームページをご参照ください。
http://www.nichiyaku.or.jp/index.html
ドーピングの簡易検査は、薬剤の分類について検出できますが、特定はできませんので、最終的には高速液体クロマトグラフィやガス・クロマトグラフィー等を用いての精密検査が必要です。

表:世界ドーピング防止規定 国際基準(2008年)
Ⅰ.常に禁止される物質と方法(競技会検査及び競技外検査)
禁止物質 蛋白同化薬、ホルモンと関連物質、β2作用薬、ホルモン拮抗薬と調整薬、利尿薬と他の隠蔽薬
禁止方法 酸素運搬能の強化、化学的・物理的操作、遺伝子ドーピング
Ⅱ.競技会検査で禁止対象となる物質・方法
禁止物質 興奮薬、麻薬、カンナビノイド、糖質コルチコイド
Ⅲ.特定競技において禁止される物質
  アルコール、β遮断薬
Ⅳ.特定物質
  吸入β2作用薬、α-還元酵素阻害薬、プロベネシド
Q69.
高齢者への投与を避けるべき薬剤について教えてください。
A.

 国立保健医療科学院疫学部部長の今井博久氏は、65歳以上の高齢者における不適切な薬物処方のリストを公開されました。これは、米国で用いられている「高齢者への投与を避けるべき薬剤のリスト」(ビアーズ基準)の日本版に相当するものです。高齢者においては、疾患や病態に関係なく一般に使用を避けることが望ましい薬剤46種類と、特定の疾患・病態において使用を避けることが望ましい薬剤25種類がリストアップされています。
薬剤選定の基準となったのは、
(1)副作用などのリスクがベネフィット(治療効果)を上回る可能性があること
(2)代替品が存在すること
の2つです。
リスト作成の手順としては、まず対象となる薬剤の候補を、
(1)2003年に発表された「ビアーズ基準」の改訂版から日本未発売の薬剤を除外したもの
(2)2003年以降の論文から、高齢者への使用を避けるべき薬剤の候補になり得ると判断できるもの
(3)それ以外に委員が「不適切な薬剤」と考えたもの
以上3通りでリストアップし、これらの各薬剤について、メンバーが「高齢者への使用が不適切かどうか」を5段階のスケールで判断し、その集計結果をフィードバックしながらアンケートを繰り返す「改良デルファイ法」で意見を集約して、作成されました。
ここに挙げられた薬剤は、高齢者に限らず、腎臓機能障害や中等度以上の肝臓機能障害などの疾患のある方にも、注意して処方する必要があるのではないでしょうか。
下記に、表の一部を紹介しますが、一覧は国立保健医療科学院疫学部の以下のサイト上で公開されています。
http://www.niph.go.jp/soshiki/ekigaku/BeersCriteriaJapan.pdf)

表:高齢者において疾患・病態によらず一般に使用を避けることが望ましい薬剤(一部抜粋)
薬剤([  ]内は代表的な商品名)
問題点
重篤度
短期作用型ベンゾジアゼピン系薬(一日あたり用量が以下に示す値を超える場合)
ロラゼパム[ワイパックス];3mg、
アルプラゾラム[ソラナックス];2mg、
トリアゾラム[ハルシオン];0.25mg、
エチゾラム[デパス];3mg
これらの薬剤は、一日あたり用量が一定量を超えないことが望ましい。高齢者では、ベンゾジアゼピンに対する感受性が高くなっているため、比較的低用量でも有効性が得られ、かつ安全であると考えられる。

参考文献:
この人に聞く,月刊薬事,Vol.50,№6,2008,p.16

Q70.
クロピドグレル(商品名:プラビックス®)とチクロピジン(商品名:パナルジン®等)の違いについて、教えてください。
A.

 クロピドグレルとチクロピジンは同じチエノピリジン骨格を有し、側鎖にカルボキシメチル基を導入した薬剤で、両者はチエノピリジン誘導体として同一グループの抗血小板薬に属します。
  チクロピジンは通常200~300mgを1日2~3回に分けて投与しますが、クロピドグレルは通常75mgを1日1回とし、出血傾向、その素因のある患者、重篤な肝障害患者・腎障害患者、高血圧症患者、高齢者、低体重の患者に投与する場合は、出血を増強する恐れがあるため、50mg1日1回から投与するなど慎重に投与することとなっています。
  クロピドグレルはプロドラッグであり、クロピドグレル本体では血小板凝集抑制作用を示さないで、その代謝物が薬理活性を持つと考えられています。小腸で吸収された後、肝臓で主に2つの経路で代謝されます。①エステラーゼによる非活性代謝物であるSR26334(M1)を生成する経路です。大部分の代謝は、この経路であると考えられています。②薬を経由して、活性代謝物H4が生成されます。そして、この活性代謝物H4やチクロビジンなどのチエノピリジン誘導体が、血小板膜上のP2Y12に結合すると、アデニル酸シクラーゼの抑制により細胞内cAMP濃度が上昇し、Ca2+動員が阻害されると同時に、 PI3Kの活性化抑制により血小板膜蛋白Ⅱb/Ⅲaの活性かも阻害され、抗血小板効果が発揮されます。
  クロピドグレルとチクロピジンは同じ薬効、同等の有効性を持っていますが、副作用については、チクロピジンで多い重篤な肝障害や汎血球減少症、さらには血小板減少性紫斑病(TTP)など重大な副作用の発現頻度が、クロピドグレルでは少ないといわれています。ですから、チクロピジンでは「投与開始後2ケ月間は、特に副作用の書記賞状の発現に十分留意し、原則として2週に1回、血球算定(白血球分画を含む)、肝機能検査を行い、副作用の発現が認められた場合には、ただちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。」とされていますが、クロピドグレルでは、 「投与開始後2ケ月間は、2週間に1回程度の血液検査等の実施を考慮すること。」とされ、必須とされていません。しかし質的には違いがなく、クロピドグレルにおいても、肝機能障害やTTP、白血球減少などの副作用が報告されていますので、注意が必要です。

参考資料:
プラビックス®、パナルジン®の名添付文書
本田麻子ら、新薬と臨床 J.New Rem. & Clin. Vol. 56 No.2 2007,p3
山﨑昌子ら、THROMBOSIS and Circulation Vol.15 No.1 2007,p122
藤原豊博、Jpn Pharmacol Ther (薬理と治療) Vol.35 No7 2007,p695

Q71.
医療用漢方服用は、通常食前または食間となっていますが、服用を忘れる患者様には、食後の服用を勧めてもよろしいでしょうか?
A.

 医療用漢方製剤は、1日2~3回に分け、食前または食間に服用することが原則とされています。このように食前あるいは食間といった空腹時の服用を勧める理由として、従来は漢方薬の吸収効率があげられてきました。しかしそのような事実を示す明瞭な根拠はありません。ただ古来より幾多の経験を積み重ねてきた漢方医学の歴史の中で、空腹時投与がいつの時代からか行われ、現在まで伝えられてきました。そこで空腹時投与の意義について、考えてみます。
まず漢方薬の主成分には配糖体が多いことがあげられます。これらには糖がついているので、水溶性に優れている反面、リン脂質からなる細胞膜を通過することが困難であることが多いようです。そこで、実際に吸収されるためには下部消化管に棲む腸内細菌によって、糖が切り離されて脂溶性が高められる必要があります。そのため空腹時に投与したほうがより早く下部消化管へ到達し、より効率よく薬効が現れやすいと考えられています。
次に主成分としてアルカロイドを含むものがあることがあげられます。これらの過量投与は有害作用をもたらす可能性があります。アルカロイドは吸収されるときに、pHが大きく関与することが明らかとなっています。アルカロイドはアミノ基を有する塩基性の化合物ですので、pHが他界ほど脂溶性が高まり吸収されやすくなります。ですから副作用の観点に立てば、アルカロイドの吸収を緩徐にするために胃内pHを低い状態にすることが良いと考えられています。
また漢方薬には特有の味や香があることもあげられます。この苦み、辛味に加えて独特の香りは、消化管の蠕動運動を高め、胃酸分泌を亢進させ、食欲を増進させるという理由から、もっぱら健胃薬として用いられてきた経緯があります。
服薬コンプライアンスの悪い患者様に対する対応ですが、まず食前または食間に漢方薬を服用することの意義を十分に説明することが重要と思います。それでも悪い場合は、飲み忘れた場合は食後に服用しても良いことを説明します。薬の効果は服用してはじめて発揮されますから、まずコンプライアンスをよくすることが重要です。ただし、その場合は、副作用の発現にいっそう注意が必要となります。

参考資料:
引綱宏彰, Modern Physician Vol.24 No.2 2004,p250
田代眞一, 薬局 Vol.52 No.2 2001,p120
友金幹視, 薬局 Vol.58 No.10 2007,p62
戸田克広, 新薬と臨牀 J.New Rem. & Clin.Vol.56 No.12 2007,p124

Q72.
新しい気管支喘息治療について教えてください。
A.

 喘息の治療の基本は、根本的に炎症を改善させるための抗炎症薬と軌道狭窄を改善するための気管支拡張薬の併用が基本となります。また長期管理薬と発作時管理薬に大別されますが、喘息の日常管理にあたっては、喘息コントロールの目標を設定して、長期的な管理が重要となってきます。 日本のガイドラインである喘息予防・管理ガイドライン(JGL2007)では、治療前の臨床所見による喘息重症度に応じた段階的薬物療法を推奨しています。一方、国際ガイドラインの代表であるGlobal Initiative for Asthma(GINA2006)では、コントロールレベルを評価して、完全なコントロールを達成することを目指していて、コントロールレベルによって治療ステップをアップダウンさせて管理します。このように、治療前の状態を評価するか、治療効果を評価するかで、両ガイドラインは違いますが、治療内容は両者ともほぼ類似しています。 下記にGINA2006を示します。この中で、日本で今年、使用可能となったのが、ステップ5にある抗IgE治療です。
オマリズマブ(商品名:ゾレア皮下注用)は、ヒト化抗ヒトIgEモノクロナール抗体で、血中遊離IgEに結合することにより、炎症細胞への結合を阻害し、炎症細胞の活性を抑制してヒスタミンやロイコトリエン等の炎症性メディエーターの放出を抑制します。 市養生の注意点として、本剤は既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難地の気管支喘息患者に本剤を追加して投与することとなっています。また主な副作用は、注射部位の紅斑、そう痒感、腫脹などと、蕁麻疹、倦怠感でした。

図:コントロールレベルを基準にした喘息治療の管理(GINA2006)
コントロールレベル コントロールレベルに対する治療法
コントロール良好 ステップダウン 今のコントロール状態が維持可能な治療ステップへ
コントロール不十分 ステップアップ 「コントロール良好」の状態になるように「ステップアップ」考慮
コントロール不良  「コントロール良好」の状態になるように「ステップアップ」
喘 息 増 悪 喘息増悪の治療を行う
ステップダウン ←←←←← 治療ステップ →→→→→ ステップアップ
ステップ1 ステップ2 ステップ3 ステップ4 ステップ5
喘息治療に関する教育、環境のコントロール
短時間作用性β2刺激薬 短時間作用性β2刺激薬
喘息管理薬の選択 1つを選択 1つを選択 1つ以上を選択 1つか両方を追加
低用量吸入ステロイド薬 低用量吸入ステロイド薬+長時間作用性β2刺激薬 中/高用量吸入ステロイド薬+長時間作用性β2刺激薬 経口ステロイド薬
(必要最低量)
ロイコトリエン受容体拮抗薬 中/高用量吸入ステロイド薬 ロイコトリン受容体拮抗薬 抗IgE治療
  低用量吸入ステロイド薬+ロイコトリエン受容体拮抗薬 テオフィリン除放製剤  
  低用量吸入ステロイド薬+テオフィリン徐放製剤    

参考文献:
・ゾレア®皮下注用 添付文書
・特集・喘息コントロール~問題点と対策~,医療ジャーナル,Vol.45,№5,2009
・気管支喘息,薬局,Vol.60,№4,2009

Q73.
アドヒアランスについて教えてください
A.

 今まで服薬状況を判断する言葉として、「コンプライアンス」が使われてきました。「コンプライアンス」とは、もともと「(要求・命令などに)従うこと、追従、へつらい、法令順守」という意味ですので、「医療者(医師や薬剤師など)からの指令にどの程度従うか」という、患者側にとって、受動的なニュアンスが含まれていました。そこで近年、アドヒアランスという言葉が使われてきています。アドヒアランスとは、直訳すると「密着・粘着・執着・固執・愛着など」で、医療現場で使う際は、「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を実施・継続すること」とされています。
これまで医薬品の服用を規則正しく守らない「ノンコンプライアンス」の問題は、患者側にあると強調されていたが、実際にはそれだけでないことが見えてきました。例えば、剤形が飲みにくかったり、服薬回数が多かったりといったような治療内容による要因や、薬剤師などの医療者が薬物治療に対する知識や自信がなくてうまく説明ができていない、あるいは患者の感情面や生活の質に無関心といった医療者側の要因、そして患者と医療者の相性の問題などもありました。このようにアドヒアランスに影響する因子として、表に示すように大きく4つに大別されます。
患者様の服薬アドヒアランスを向上させるためには、まず医療者と患者様が良好な関係を築くことが重要と思います。そして、この治療法は実行可能か、また治療を妨げる因子があるとすればそれは何かについて考え、それを解決するためには何が必要かなどをアドバイスし、患者様と共に考えて決定していく必要があると思います。一緒に考えることが、より患者様の理解やアドヒアランスを向上させ、ひいては治療効果を増すことが期待できます。そのためにも、医療者は、治療に対する正しい知識とコミュニケーションスキルを習得する必要があるのではないでしょうか。

表:アドヒアランスに影響を与える要因
1. 治療内容(薬剤や処方など)による要因

2. 患者側の要因
[1]心理的要因
    [2]非心理的要因
    [3]疾病や薬物療法への理解不足
    [4]精神症状による要因

3-1. 医療者側の要因
3-2. 患者―治療者の治療関係の要因
4. 周囲の要因(環境)

参考文献:
・尾鷲登志美ら,月刊薬事,Vol.50 №3 2008,p19
・植村研一,月刊薬事,Vol.50 №3 2008,p23
・小林麻美ら,医薬ジャーナル,Vol.45 №5 2009,p1401

Q74.
小児の解熱法について教えてください
A.

 毎年11月下旬から翌年3月下旬ごろまで罹患者が増えるのがインフルエンザを含めた風邪などのウイルス感染者ですが、今年はすでに新型インフルエンザ罹患者が増えてきています。その主要な症状の一つが「発熱」です。
  40℃を超える発熱は、ある種の細菌やウイルスの増殖が抑えられることが、分かっています。またヒトにおいては、水痘の小児にアセトアミノフェンを投与すると症状が遷延することや、風邪の成人にアスピリンを投与すると症状が遷延し、ウイルス排除に時間がかかることが示されています。このように発熱は感染に対する生体防御反応として重要ですが、時として身体にとって害となることがあります。なぜなら発熱時には基礎代謝率、身体の酸素消費量、二酸化炭素産生量が増加し、心血管系や呼吸器系の仕事量が増えるので、心疾患や呼吸器疾患のある小児などには、不利になるからです。
  小児の解熱に良く用いられるアセトアミノフェンの使用量は、添付文書には「通常、乳児、幼児及び小児には、体重1kgあたり1回10~15mgを使用する。投与間隔は4~6時間以上とし、1日総量として60mg/kgを限度とする。」とされています。比較的に安全な薬剤ですが、連続使用(5日以上の連用)では腎障害などの毒性が出現しやすいと言われていますし、大量使用になれば肝障害を生じることも忘れてはいけません。なおアセトアミノフェンの解毒には、N-アセチルシステインが使用されています。
  熱性けいれんの際に、ジアゼパムなどの抗けいれん薬が使用されますが、アセトアミノフェンなどの解熱剤と併用する場合は、抗けいれん薬坐剤を先に使用し、30分以上あけてから解熱薬坐剤を使用する必要があります。一緒に使用すると、脂溶性薬剤のジアゼパムが、アセトアミノフェンの油脂性基剤に一部取り込まれてしまうため、体内への吸収が遅れるといわれています。
  熱の上昇期に冷やしたり解熱剤を使用したりすると、寒気が持続してしまいます。熱が上がりきり、手足が温かく顔が赤くなってから、薄着にします。そしてタオルで巻いた氷嚢などを用い、首の付け根、腋の下、足の付け根を冷やすと体温を下げるのに効果的です。ただし体温を下げるのは病気を治す意味はなく不快感を減らすことが目的なので、こどもが嫌がる場合は無理に行う必要はないと思います。それよりも水分補給をしっかりと行うように、指導が必要です。
  患者の家族には、「解熱薬は、あくまでも対症療法であり、治癒を推進するものではないこと、平熱まで戻す必要はなく1℃から数℃下がれば大分楽になること、大体1~2時間程度で効いてくること」などを、説明しましょう。また小児の発熱性疾患には重篤な感染症の危険性もあるので、解熱剤を用いて安心するのではなく、適切に受診を勧めることも重要と思われます。

参考資料:
・特集「こどもの発熱」,薬局,Vol.58,No.1,2007
・「アンヒバ坐剤小児用」添付文書

Q75.
腎機能が低下している患者様への注意点について教えてください
A.

 腎機能低下時における薬剤投与の問題点は、さらに腎機能を悪化させることと、薬剤やその代謝物が排泄されずに蓄積が起こり、副作用を発現させることです。したがって、腎機能低下時に問題をきたしやすい薬剤は何か、あるいはどの薬剤をどれだけ使用すれば安全かを知っておく必要があると思われます。
  調剤上、特に問題となりやすいものとして、H2受容体拮抗薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、消炎鎮痛薬(NSAIDs)、ジゴキシン、ベザフィブラート、スルピリド、アマンタジン、アルミニウム・マグネシウム含有製剤などがあります。なお抗菌薬には、ペニシリン系、セフェム系、モノバクタム系、ニューキノロン系、グリコペプチド系など、大部分が腎排泄型であり、投与量あるいは投与間隔の変更が必要となります。
  これらが処方されている場合、腎機能検査値(血清クレアチニン(S-Cr)、血中尿素窒素(BUN)、尿酸(UA)、クレアチニンクリアランス(Ccr))の確認が必要です。なおクレアチニンクリアランスが測定されていない場合は、下記のCockcroft&Gaultの式により、推定することができます。

Cockcroft&Gaultの式
Cockcroft&Gaultの式

 しかし病院における外来調剤部門や保険薬局などでは、患者情報が不足して、なかなか腎機能が低下している患者かどうかの判断が難しいと思われます。そこで、下記のような腎疾患患者に用いられる薬剤(多くの場合、併用されています)をチェックし、患者様に「今まで腎臓が悪いと指摘されたことがないか」を聞いた上で、添付文書等を参考にして、腎機能障害禁忌の薬剤あるいは腎排泄型薬剤が減量されずに処方されていないかを確認されてはいかがでしょうか。

表:腎疾患患者に用いられる主な薬剤
使用目的 薬剤
糸球体内圧の低下、尿蛋白の抑制 ACE阻害薬、ARB薬
毒素の吸着除去 活性炭
低カルシウム血症 活性型ビタミンD
高カリウム血症 陽イオン交換樹脂
高リン酸血症 沈降炭酸カルシウム、塩酸セベラマー
浮腫 利尿薬(フロセミド)
アシドーシス 炭酸水素ナトリウム

参考文献:
乾ら,改定2版 腎機能別薬剤使用マニュアル,2006
 David N.Gilbert,M.D.,サンフォード 感染症治療ガイド(第39版),2009

Q76.
DPP4阻害薬について、教えてください。
A.

本邦でも、インクレチン関連薬のDPP4阻害薬(シタグリプチンリン酸塩水和物)が、12月に発売されました。DPP4とは、dipeptidyl peptidase-Ⅳの略で、血中でのインクレチン分解酵素です。インクレチンとは、食事の摂取により消化管から分泌され膵臓からのインスリン分泌を促進するホルモンです。現在、小腸上部から分泌されるGIP( glucose-dependent insulinotropic polypeptide )と、小腸下部から分泌されるGLP-1( glucagons-like peptide-1 )の2つが知られています。膵臓では共に、膵β細胞膜上の受容体を介してインスリンの分泌促進を発現します。このインスリン分泌の増強はグルコース濃度に依存的であるため、血糖値が高いときは分泌が促進され、低い場合は分泌が増加しませんので、血糖値を下げ過ぎないことが特長であるといわれています。また動物モデルでは、膵β細胞の増殖を促進したり、細胞死を抑制することが示されています。しかし膵臓以外では、2つのインクレチンは違う作用を示しています。GLP-1は消化管における胃排泄遅延作用や中枢神経系に対する食欲抑制作用を有するため、体重減少につながり、GIPは脂肪細胞に直接働いてグルコースや脂肪酸の取り込みを促進し、脂肪を蓄積するため、体重増加につながります。
インクレチンの多くは、分泌後にDPP4によって速やかに分解されます。DPP4阻害薬は、インクレチンを分解する酵素であるDPP4の働きを阻害することによって、インクレチンが分解されないようにする薬剤です。
用法用量は、「通常、成人にはシタグリプチンとして50mgを1日1回経口投与する。」とされていますが、腎排泄であるため中等度腎機能障害者では、25mgを1日1回に、また重度腎機能障害患者は、禁忌とされています。適応は、2型糖尿病で、①食事・運動療法のみ、②SU剤使用、③チアゾリジン系薬剤使用、④BG剤使用に加えて、使用することができますが、αGI剤や速効型インスリン分泌促進剤、インスリン製剤使用患者には、適応がありません。今後の臨床での検討が待たれます。なお添付文書の「薬物動態(9.薬物相互作用)」に、ボグリボースとの併用において、「シタグリプチンのAUC及びCmaxは、シダグリプチン単独に比べて、低下した(それぞれ17%及び34%)。」とされていますので、注意が必要と思われます。
低血糖については、単独では1.4%ですが、グリメピリドとの併用においては、2.8%と上昇しており、低血糖は起こしにくいとされていますが、併用時(特にSU剤)には、注意が必要です。

参考資料:
山口祐一郎,糖尿病,Vol.52,No.6,2009
武市佳巳,プラクティス,Vol.27,No.1,2010
「ジャヌビア®錠」添付文書

Q77.
緑内障治療薬(点眼薬)の服薬指導上の注意点を教えてください。
A.

 効果は間違いなく高いが,眼瞼色素沈着や睫毛伸長,循環器系や呼吸器系など全身性の副作用が懸念されること,特に高齢者の使用が多いことから,十分な指導が必要です。1滴を確実に!!溢れた点眼液は鼻涙管を介して消化管へ向かい消化吸収により全身的副作用が問題になり,また眼瞼炎等の原因にもなります。点眼の際は,仰向けに寝て,結膜嚢内に点眼し,1~5分眼を閉じて目頭部を圧迫させること,また眼から流れ出た液は清潔なティッシュペーパーで拭き取ることが重要です。下表は各緑内障治療薬の特徴と副作用をまとめたものです。

  β遮断薬
チモプトール
ミケラン, ミロル
ベトプティック
αβ遮断薬
ハイパジール
α1遮断薬
デタントール
PG関連薬
トラバタンズ
キサラタン
レスキュラ
炭酸脱水酵素阻害薬
トルソプト
エイゾプト
副交感神経刺激薬
サンピロ
交感神経刺激薬
ピバレフリン
眼圧下降機序 房水産生抑制 房水産生抑制+ぶどう膜強膜流出促進 ぶどう膜強膜流出促進 ぶどう膜強膜流出促進 房水産生抑制 線維柱帯流出促進 線維柱帯流出促進
点眼回数 1~2回 1~2回 2回 1~2回 2~3回 4回 2回
局所副作用
結膜アレルギー
結膜充血
角膜上皮障害
眼瞼炎
睫毛多毛
虹彩・眼瞼色素沈着
虹彩炎
CME
角膜浮腫
角膜ヘルペス再発
縮瞳

+/-
+/-
+~++








+/-
+/-
+~++








+/-

+~-








+/-
+~++
+~++

++
+++
-~++
+~++

+/-

+/-
+/-
+/-





+/-


+/-

+/-







++

++
++
+/-






++
全身副作用
徐脈
血圧低下
頻脈・血圧上昇
気管支収縮
血漿脂質上昇




+~+++




+++


+/-






















引用文献:治療薬ハンドブック-薬剤選択と処方のポイント2009-(株)じほう

Q78.
健康食品の有効性・安全性情報のデータベースはありませんか?
A.

 最近、テレビや新聞で「健康食品」に関する情報があふれていますが、間違っているものや、大げさなものもあります。また医薬品を服用している場合には、相互作用を注意する必要があります。私たち薬剤師は、患者様に正確な情報を提供しなくてはいけません。
  書籍では、日本薬剤師会推薦の「健康食品のすべて―ナチュラルメディシン・データベース―」に、効き目、安全性、医薬品との相互作用などについて、記載されています。インターネット上では、独立行政法人 国立健康・栄養研究所のホームページに「健康食品」の安全性・有効性情報として、公開されています。
  今回は、このホームページを紹介したいと思います。
(1)ホームページ(http://hfnet.nih.go.jp/)を開いて、素材情報データベースをクリックします。
(2)調査している「和名」をクリックします。
(3)「全ての情報を開示」ボタンをクリックします。概要をはじめ、安全性、有効性、総合評価などが詳しく記載されています。また情報に係わる文献についても記載がありますので、検索できるようになっています。
  患者様の中には、「天然だから」あるいは「食品だから」といって、健康食品は安心と思われている方もいますが、天然のものにも毒素を含むものがありますし、健康食品には特定の成分を過剰に濃縮して含有しているものがありますので、一般に食経験がある成分であっても、こうしたものが必ずしも安全であるとは言えません。
  患者様に正しい情報を提供するために、今回紹介しましたデータベースを参考にされてはいかがでしょうか。

Q79.
褥瘡の治療薬について教えてください。
A.

 褥瘡とは、長時間または頻回に加わる外力(圧力、ずれ力)が原因で生じる組織の阻血性壊死です。日常生活自立度の低下した虚弱高齢者や、脊損、周術期などにみられ、仙骨、尾骨、踵骨部、大転子部、坐骨結節部などに好発しますが、全身のどの部位にも発生する可能性があります。
  治療は,Wound bed preparationの考え方に従って,感染をコントロールしながら創傷治癒を図っていきます。創部に加わる外力を取り除くことが最優先され、栄養の改善、皮膚の湿潤対策も、創部の局所治療と平行して行われます。日本褥瘡学会では、DESIGN分類を指標とした病態の把握や褥瘡の治療方針決定を勧めています。DESIGN分類では、褥瘡の構成要素をD(深さ)、E(滲出液)、S(大きさ)、I(炎症/感染)、G(肉芽組織)、N(壊死組織)として、それぞれ重度では大文字、軽度では小文字で表記されます。P(ポケット)があればーPで表現されます。
  慢性期褥瘡では、深さによって治癒転機が異なるため、まず深さを判定します。深い褥瘡(D)では、創面を充分に洗浄し、壊死組織を除去し、感染を制御しながら湿潤環境で創治療を促進させることが必要です。特に感染対策は最優先となります。そして次に、創を適度の湿潤環境に保ちながら滲出液をコントロールして肉芽形成をはかります。
  下記に、主な褥瘡治療薬(カッコ内は主な商品名)を示します。

(1) 滲出液の吸収(カデックス®、デブリサン®、ユーパスタ®など):感染や浮腫は大量の滲出液を伴うことが多く、積極的な水分コントロールを行うために創面の滲出液を吸収し、浮腫や炎症を抑えます。
(2) 創の収縮・上皮化(アズノール®、リフラック®、フィブラスト®、ソルコセリル®など):創の縮小は上皮化促進および創の引き締めにより収縮させます。乾燥しすぎないように注意します。
(3) 感染・炎症(カデックス®、ゲーベン®、イソジン®、ユーパスタ®、フランセチン®Tパウダーなど):感染制御はきわめて重要で感染・炎症の持続は細胞の増殖を妨げるので抗菌薬等で抑えます。感染兆候が明確でないこともあるので、炎症反応の有無だけで判断しません。
(4) 肉芽組織(ソフレット®、フィブラスト®スプレー、プロスタンディン®、ソルコセリル®など):肉芽組織に適した湿潤環境を保持した上で、肉芽形成を促す外用薬を選択します。壊死組織の残存により肉芽形成は阻止されます。
(5) 壊死組織(カデックス®、ゲーベン®、ブロメライン®、フランセチン®Tパウダーなど):壊死組織は外科的および化学的デブリドマンによりできる限り速やかに除去する。軟化した壊死組織は健常組織と分界して除去しやすいです。壊死組織は最近の温床となることに配慮が必要です。
(6) ポケットの解消(フェブラスト®、ユーパスタ®など):ポケットから治療します。内部の壊死組織や不良組織は除去し、最奥部から肉芽を形成します。縮小には吸水性薬剤、または肉芽形成促進剤を選択します。

参考文献:
・特集「褥瘡と向きあう」,月刊薬事,Vol.51,No.2,2009
・褥瘡,薬事,Vol.61,No.4,2010

Q80.
糖尿病の診断基準が新しくなったそうですが、教えてください。
A.

 糖尿病診断基準が11年ぶりに改定され、今年の7月1日から施行されました(図参照)。今回新しくなる診断基準の中で最も注目されるのは、診断基準に「HbA1c6.5%以上」(6.1%[JDS値]が追加されたことです。) 従来の診断基準では、
(1)空腹時血糖値126mg/dL以上
(2)75g糖負荷試験で2時間値200mg/dL以上
(3)随時血糖値200mg/dL以上
のいずれかが再現性を持って認められる場合に糖尿病と診断されており、HbA1c値は補助的な位置付けでした。
しかし、HbA1cは検査が行いやすく、慢性の高血糖状態をよりよく反映する指標として有用であることから、今回の改訂で、「補助的な項目」からより上位となる診断基準の1つとして取り上げられました。
  新診断基準にHbA1c値が加わりましたが、糖尿病の診断は血糖値とHbA1cの両方を評価するよう定められており、血糖値は必須のまま変わりません。患者が「HbA1c6.5%以上(6.1%〔JDS値〕)」のみを満たすだけでは糖尿病と診断できず、HbA1cと同時あるいは再検査で血糖値を測定し、血糖値も診断基準を超えて糖尿病型であった場合に糖尿病と診断されます。1回目の検査でHbA1c値が6.5%以上(6.1%〔JDS値〕)で糖尿病型と診断され、再検査で再度糖尿病型と診断されても、血糖値が糖尿病型でなければあくまでも「糖尿病疑い」にとどまるとされました。
  HbA1c値については、日本独自の測定法によって得られるJDS値を、欧米を中心に使われている測定法によって得られるNGSP値に換算します。診断基準の6.5%はNGSP値相当であり、現行の日本の測定法によるJDS値では6.1%となります。約1年後から、HbA1cはHGSP値に相当する値として表記しますが、HbA1c測定方法はこれまでと変わらず、あくまでJDS値に0.4を足した値をNGSP値として示すことになります。

図:糖尿病の臨床診断のフローチャート
図:糖尿病の臨床診断のフローチャート
Q81.
「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)」が、発行されたようですが、教えてください。
A.

 日本痛風・核酸代謝学会から2010年1月に、「高尿酸血症・痛風のガイドライン(第2版)」が発行され、第1版から約8年ぶりの改定となりました。第2版では、特に臨床的エビデンスレベルを重視し、日常診療に役立つ資料集としての意義も強調されています。 各項目の最初には、ステートメントとしてまとめが提示されており、エビデンスレベル(1a~5)、コンセンサスレベル(1~7)、推奨度(A~C)が記載されていますので、日常の指導時に参照できます。
  高尿酸血症の治療方針に関しましては、図1を参照してください。尿酸値が7.0mg/dLを超えるもので痛風関節炎または痛風結節を認める症例は生活習慣の改善を前提に薬物治療の適応を検討します。 無症候性の場合は、生活習慣の改善を行ったうえで、薬物治療を慎重に考慮するとしています。特に合併症がある場合、8.0mg/dL以上で薬物治療を検討します。薬物療法に先立って生活指導の重要性が言われていますが、発症リスクを増やす要因としては、 アルコール摂取量は用量依存的に上昇させる、肉類・砂糖入りソフトドリンク・果物の摂取量が多い、体格指数(BMI)が高いなどがあげられ、また発症リスクを減らす要因としては、ランニング距離が長い、適度な運動を日常的に行う、コーヒー摂取量が多いなどがあげられ、 これらはエビデンスレベル2aで高く、推奨度Bで言い切れる根拠があるとされています。
  高尿酸血症・痛風は代表的な生活習慣病であるので、生活指導は、食事療法、飲酒制限、運動の推奨が中心となり、肥満の解消は血清尿酸値を低下させる効果が期待されています。なお食事療法としては、適切なエネルギー摂取、プリン体・果糖の過剰摂取制限、十分な飲水が勧められます。

図1 高尿酸血症の治療方針
図1 高尿酸血症の治療方針

参考文献:
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版),日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改定委員会,2010.1

Q82.
インフルエンザの経鼻ワクチンについて、教えてください。
A.

 日本でのインフルエンザワクチンには、皮下注しかありませんでしたが、米国では、経鼻ワクチンも使われていました。そしてようやく日本でも、2010年10月から経鼻ワクチンの人での効果を調べる臨床研究が始まりました。注射器がいらないため、痛みを伴わないで、多くの人に素早く使えます。2011年以降の実用化を目指しています。
  厚生労働省の研究班(代表=長谷川秀樹・国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第6室長)が、この臨床研究を実施しています。ワクチンは阪大微生物病研究所が従来の季節性インフルエンザ(A香港型)のウイルスを不活化して毒性をなくしたものに、粘膜の免疫を刺激する補助剤を混ぜて作りました。30~50才の健康な成人に、約1ヶ月をあけて2回、鼻に噴霧を行います。
  従来の注射するワクチンは、血液内に抗体を作り、ウイルスの感染を防ぐというよりは、体内で感染したウイルスの活動を抑えるというものでした。今回の経鼻ワクチンは、従来のワクチンでは出来ない「IgA」抗体を、ウイルスがとりつく鼻や喉の粘膜の外に、分泌させ、免疫を活性化し、ウイルスが粘膜にくっつく前に、この抗体が撃破して、感染そのものを防御する効果があるとされています。
  では米国製との違いはなんでしょうか?それは、不活化ワクチンか生ワクチンかということです。米国製のワクチンは「Flumist」という製品名で、弱毒化生ワクチンです。弱毒化されたものといっても、感染力は残っていますから鼻の粘膜に接種すればウイルスは体内で増殖を始めます。弱毒化しているといっても生ワクチンですので、感染により発熱等の病状が生じる危険性があります。日本の場合は、不活化ワクチンです。ですからウイルスとしての体はなしていませんので、感染力がありません。
  インフルエンザウイルスの型は理論上144通りあります。またHいくつNいくつという(例:H5N1型)ウイルスの大まかな型の他に、細かい遺伝子の違いがあって、それを少しずつ変化させることで、インフルエンザウイルスは新しい流行を作ってきました。今回のワクチンは、このような多少の遺伝子の違いがあっても、感染を抑制できる効果があるようです。この性質を利用して、他の国で流行しているウイルスの型を知るだけで、日本に流行する前にワクチンを量産して、広く国民に接種することが出来ます。また日本だけでなく、日本より先に危機的な状況になった国にも手助けが出来ると考えられています。
  そして感染予防において忘れてならないのが、ワクチンだけに頼るのではなく、うがい、手洗い、マスクの着用が、重要であるという点です。

Q83.
経口配合剤の種類について、教えてください。
A.

 2004年にプレミネント®錠が承認されて以来、ここ数年、経口配合錠が新薬として数多く発売されています。薬効別で多いのは、高血圧や高脂血症、糖尿病といった生活習慣病に対する治療薬です。これらの薬剤は、長期にわたって服用することが予想されるため、配合錠に変更することによってコンプライアンスやアドヒアランスの向上が期待されています。また配合錠の投与は単剤併用に比べて安価であり、医療費負担が軽減されると考えられていますが、現在、長期投与ができない薬剤もあり、全てがそのようであるとは、今のところいえません。現在使用されています医療用経口配合剤(降圧薬・降圧薬/高脂血症薬・糖尿病治療薬)について、表に示します。

表:主な医療用経口配合剤
  • 選択的AT1受容体ブロッカー/利尿薬配合剤
    プレミネント®配合錠、コディオ®配合錠(MD/EX)、ミコンビ®配合錠(AP/BP)、エカード®配合錠(LD/HD)
  • 選択的AT1受容体ブロッカー/持続性Ca拮抗薬配合剤
    エックスフォージ®配合錠、ユニシア®配合錠(LD/HD)、レザルタス®配合錠(LD/HD)
  • 持続性Ca拮抗薬/HMG-CoA還元酵素阻害薬配合剤
    カデュエット®配合錠(1番/2番/3番/4番)
  • チアゾリジン系薬/ビグアナイド系薬配合剤
    メタクト®配合錠(LD/HD)

 一方で、配合される成分は同様でも、成分量の違いによって品名が違うため(例:カデュエット配合錠は、1番~4番まで4種ある)、採用品目数が増えることが予想されます。処方の単純化が、逆にミスや事故を誘発される可能性もあり、注意が必要です。
 ここでは、一番良く処方されています「持続性アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)+利尿薬配合剤」について、解説します。
 ARBは、生理的昇圧物質」であるアンジオテンシンⅡ(AⅡ)が作用するAT1受容体に高い親和性を示し、AⅡの作用を選択的に拮抗することにより降圧効果を発揮します。 一方、チアジド系利尿薬であるヒドロクロロチアジド(HCTZ)は、尿細管におけるナトリウム再吸収抑制による循環血液量減少作用が考えられており、その利尿作用鬼よりレニン・アンジオテンシン系の活性化を起こすことから、ARBとの併用で降圧効果の相乗効果が期待できます。 HCTZの副作用として、低K血症、高Ca血症、低Mg血症、耐糖能低下、脂質代謝異常、高尿酸血症などがあり、日本では、欧米に比べて10%未満の使用頻度となっていました。しかし最近では、日本の高食塩摂取量による減塩の重要性(チアジド系利尿薬は主にNa再吸収を抑制します)、及び大規模臨床試験での有効性などから見直されてきました。また低用量(12.5mg/day以下)では、Kの低下や尿酸値への影響は起こらないとされています。そしてHCTZはインスリン感受性の低下を介して糖代謝を悪化させますが、ARBにはインスリン感受性を改善させる作用があり、相殺的に働くため配合の意義があると考えられています。
  今後も,副作用軽減や服薬コンプライアンス・アドヒアランスの向上,医療費の軽減,そして医療安全を考慮したメリットある配合錠の開発が期待されています。

参考文献:
・特集「配合剤の実力を探る」,薬局,VOL.61,NO.12,2010
・各添付文書

Q84.
ニューモシスチス肺炎の治療法について、教えてください。
A.

 ニューモシスチス肺炎の原因微生物は、Pneumocystis jiroveciと呼ばれる真菌(カビ)の一種です。以前はニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)による肺炎とされ、「カリニ肺炎」と呼ばれていました。しかし、犬から見つかったニューモシスチス・カリニと、ヒトで肺炎をおこすニューモシスチスは異なる種類であることが判明し、ヒトに病原性をもつニューモシスチスはP.jiroveciに命名し直され、これによる肺炎はニューモシスチス肺炎に名称変更されました。
  正常な免疫能力を持つ場合、発症することは希であり、ステロイド薬や免疫抑制薬、抗TNF-α抗体などの生物学的製剤、抗悪性腫瘍薬などの長期使用や、骨髄・臓器移植後などのさまざまな免疫不全状態が、発症の危険因子となります。また、HIV感染者における代表的な日和見感染症の一つでもあります。なおHIV感染者は比較的ゆっくりした経過をとりますが、血液疾患患者や免疫抑制薬使用患者の場合は急激な経過をとり、早期に適切な治療を行わなければ死亡率が高くなります。
  治療の第一選択薬はsulfamethoxazole・trimethoprim(ST)合剤であり、非HIV患者では14日間、HIV患者では21日間を目安に投与します。投与量は、体重60kg以上では1回4錠を、60kg未満では1回3錠を、1日3回投与します。第二選択薬はペンタミジンですが、数%に耐性があることと、肺への移行性が悪く治療成績もST合剤と比較して劣っていることが分かっているため、必ずST合剤を優先的に使用し、副作用発現時にペンタミジンの点滴静注へスイッチして、残りの治療期間を投与することとなっています。
  また治療前のPaO2が70mmHg未満あるいはAaDo2(肺胞気・動脈血酸素分圧較差)が35以上の場合は、ステロイドを併用することで予後が改善することが知られています。
  ST合剤の副作用として、投与開始後7~14日頃に発熱、発疹といった過敏反応が多くみられ、その他に、低ナトリウム、高カリウム血症の電解質異常や肝機能・腎機能障害などがみられます。電解質異常や肝機能障害は比較的軽度のため、多くは投与を続行できる一方で、発熱、発疹の過敏反応では、ほぼ全例が投与を継続できずに中止に追い込まれます。治療終了まで投与を継続できるのは、全体の4割弱であり、多くがペンタミジンへの治療が必要となります。
  ニューモシスチス肺炎では、発症および再発予防法が確立されています。まず簡便さと有効性から(1)「ST合剤1日1錠、連日」が第一に選択される方法です。その他に、(2)「ST合剤1日2錠、週3回」や(3)「ペンタミジン吸入1回300mg、2~4週間に1回」などがありますが、(1)~(3)の全て保険適応外とされています。

参考文献:
・日本語版 サンフォード感染症治療ガイド2008(第38版)
・今日の治療指針2007年版(Volume49)

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